なぜ日本のプロレスはつまらなくなったのか?:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(3/4 ページ)
再び、全日本プロレスが分裂した。きっかけは新たに就任したオーナーによる「ヤラセ」発言だった。プロレス業界は離れてしまったファンを取り戻すために、何をすべきなのか?
「プロレスラーって弱いんだ」――ファン離れが進む
しかし、2000年5月に行われた「コロシアム2000」でパンクラスのトップレスラーだった船木誠勝が、ヒクソンに挑戦するもチョークスリーパーで失神負け。高田と同じ「UWF」という1980年代に爆発的な人気を誇ったプロレス団体の出身レスラー・船木の惨敗は、業界内で「多くのファンが『プロレスラーって弱いんだ』と失望し、プロレスから離れていってしまった」といわれている。
その後も2003年12月の「イノキボンバイエ」では新日本プロレスの主力・永田裕志が、当時「人類最強」と称されていたエメリヤ・エンコ・ヒョードルに何もできずに秒殺されて完敗するなど、トップ級のプロレスラーがことごとく総合の世界で敗れ去る姿が当たり前のようになってしまっていた。
その一方、総合格闘家に転身して成功を収めたレスラーもいた。筆頭は桜庭和志だ。2000年5月の「PRIDE GP」においてヒクソンの弟でUFCでも名を馳せたホイス・グレイシーに完勝、桜庭は総合格闘技界で一躍スターの座をつかんだ。全盛期のボブ・サップやマーク・ケアーに完勝した藤田和之も、その1人といっていいだろう。
あるベテランプロレスラーは「桜庭も藤田も、総合格闘技の世界に足を踏み入れるまでは未完の若手レスラー。彼らはプロレスにそれほど染まっていなかったことが功を奏し、総合で本来の才能を開花させることができたのです」とふり返る。
「永田や高田らは当時のトップレスラーでプロレスにどっぷり漬かった人気者でしたからね。シナリオが用意されたプロレスの戦いに慣れ切っていた人間が、簡単に勝てるほど総合は甘くない。プロレスの世界では強いと思っていたメインイベンターがコロッと真剣勝負で負ければ、そりゃあプロレスファンは萎えますよね」
「確かに桜庭や藤田が総合で結果を残したのは事実ですが、それでも『プロレスラーって弱いんだ』とソッポを向いてしまったファンは戻って来なかった。むしろスピーディで緊迫感が漂う総合格闘技の人気に火がつき、いわゆる『プロレスこそ最強の格闘技』と信じていたストロングスタイル派のファン離れが加速してしまった。だからプロレス界では、こう言われているんですよ。『総合と交わったのは失敗だった』とね。プロレスラーは総合の生贄(いけにえ)にされてしまったのです」
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