なぜ日本のプロレスはつまらなくなったのか?:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(4/4 ページ)
再び、全日本プロレスが分裂した。きっかけは新たに就任したオーナーによる「ヤラセ」発言だった。プロレス業界は離れてしまったファンを取り戻すために、何をすべきなのか?
団体オーナーが打ち出す方向性が問われている
こうした過去の反省を踏まえ、近年の業界内では「総合の呪縛」を振り払おうというムードが強まっていた。今では日本での総合格闘技の人気がひと昔前よりも低下したこともあって、プロレスラーが無謀な挑戦に臨むパターンもなくなりつつある。
白石氏のヤラセ発言は、ようやく「真剣勝負の総合格闘技」と「ショースタイルのプロレス」が混同されなくなり、プロレスファンもコア層から再確立されようとしていた時期に飛び出したのだ。業界内から「悪夢再びか……」との懸念されるのも無理はないだろう。
だが、プロレスを扱う報道関係者の中からは次のような分析も出ている。「やっぱり、何だかんだ言ってもプロレス界から『総合の呪縛』を振り払うのは難しい。白石さんの言葉に乗っかるわけではないけれど、総合の世界でもチャンピオンになるトップレスラーが出てくれば……。『プロレスラーこそが最強』という、かつての風潮を取り戻し、昔のファンがまた帰って来るかもしれない」
米国ではプロレス団体「WWE」でヘビー級王者になった人気レスラーのブロック・レスナーが2007年6月、格闘家に転向。猛練習を積んだ末、2008年11月にUFCでもヘビー級王者となる快挙をやってのけ、米スポーツ専門局「ESPN」など多くの主要メディアから「リアル・チャンピオン」と称えられた。
現在、レスナーはWWEにレスラーとしてUターンを果たし、同団体のメインイベンターとして人気を博している。「日本のプロレス界にもレスナーのようなプロレスラーがいれば」と願う声もあるが、人材豊富な米国でも「100年に1人の逸材」と評された二刀流男の出現はそう簡単なものではない。
再び襲い掛かってきた「総合の呪縛」。これまでのように接触を避け続けるのか。あるいは逆に向き合っていくのか。各プロレス団体の経営者たちの手腕と方向性が問われている。
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