連載
一大イベントの陰で何が見えたのか――南相馬市と浪江町の今:相場英雄の時事日想(3/4 ページ)
筆者の相場氏は7月下旬、福島県南相馬市を訪れた。政府首脳は「福島の再生なくして日本の再生なし」と声高に訴えているが、旧警戒区域の復興は全く手つかずの状態だった……。
一大イベントのすぐそばで
祭の行事が終わったあと、私は自家用車を南相馬市小高区の沿岸から、浪江町に向けて走らせた。従来、小高区と浪江町の境界付近に設置されていた警察による検問はなくなった。今年になり、警戒区域と計画的避難区域の再編が行われたためだ。
フリーのモノカキで、通行許可証を持たない私は、何度もこの地点でUターンしていたが、この日はあっけなく、浪江入りすることができた。
浪江の市街地に続く国道を走ると、急に道幅が狭くなったような錯覚に襲われる。道路の両側の雑草や樹木が育ち、つまり、誰も手入れしていなかったので、道路を覆うように伸びているからだ。
街の中心部に入ると、国道から町内各地に通じる道路には民間警備会社のガードマンが立っていた。住民や関係者以外は実質的に入れないようにしているのだろう。
国道を南下し続ける。カーナビのモニターをみると、まもなく双葉町との境界だ。すると、新たな検問ポイントが視界に入る。しかし、以前と全く違うのは、検問しているのが民間警備会社だということ。もちろん、私は通行証を持っていなかったので、ここでUターンした。
国道を北上する間、私は周囲の景色に目を凝らした。昨年5月、初めてこの地を訪れたときと、まったく様相が変わっていないのだ。ただ1つ違うのは、雑草が生い茂っている点。人の手が入らないままの土地に接し、「荒涼」という言葉しか思い浮かばなかった。
関連記事
- ヤバいのは“中国猛毒食品”だけではない、日本にもある
『週刊文春』が“食”に関する記事を掲載した。記者が中国に飛び、ヤバい食品がどのような経緯で生まれたかをリポートしたものだが、日本には危険な食べ物がないのか。答えは「ある」。 - “カワイイ”が自然を殺す、北海道で見た人間の残酷さ
「キタキツネ」といえば、北海道の野生動物のひとつとして有名だ。野生動物なので、本来、人間とはあまり遭遇しないものだが、筆者の相場氏はクルマを運転中に出会った。しかもその姿を見て、違和感を覚えたという。その理由は……。 - 「ピンクスライム」は問題にならないのか 食品業界の裏側に迫る
米国のファストフード業界が揺れている。低価格を支えるある加工商品がやり玉に上がっているが、米当局や専門家は安全性に問題はないとしている。それにしてもこの問題、日本に“飛び火”するかもしれない。 - “やらせライター”に困っている……とあるラーメン店の話
とあるラーメン店の店主がこう言った。「本業以外の雑務が増えてやりにくい。昔はこんな気を遣う必要なかったのに」と。本業とは、もちろん丹誠込めて作る自信作のラーメンのこと。では本業以外とは、一体どんなことなのだろうか。 - NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由
言葉を生業にしているマスコミだが、会社によってビミョーに違いがあることをご存じだろうか。その「裏」には、「華道」や「茶道」と同じく「報道」ならではの作法があるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.