なぜ阪神・淡路大震災の教訓を生かせなかったのか――「助けあいジャパン」の創始者に聞く:働くこと、生きること(前編)(1/3 ページ)
公益社団法人「助けあいジャパン」の創始者・佐藤尚之さんは、阪神・淡路大震災を経験し、個人が情報を発信することの大切を痛感したという。その後、ネットを中心に、情報発信を続けてきたが、東日本大震災のときにはうまく機能しなかった。その理由は……。
働くこと、生きること:
終身雇用が崩壊し、安定した生活を求め公務員、専業主婦を目指す人が一定数いる一方、東日本大震災などを経て、働き方や仕事に対する考えを大きく変えた人は多く、実際に働き方を変えた人も増えている。仕事一辺倒から、家族とのかかわり方を見直す人も多くなっている。
さまざまな職場環境に生きる人々を、多数のインタビュー経験を持つ印南敦史が独自の視点からインタビュー。仕事と家族を中心としたそれぞれの言葉のなかから、働くとは、生きるとは何かを、働くことの価値、そして生きる意味を見出す。
この連載『働くこと、生きること』は、2014年にあさ出版より書籍化を予定しています。
印南敦史(いんなみ・あつし)
1962年東京生まれ。ライター、編集者、コピーライター。人間性を引き出すことに主眼を置いたインタビューを得意分野とし、週刊文春、日刊現代、STORYなどさまざまな媒体において、これまでに500件におよぶインタビュー実積を持つ。また書評家でもあり、「ライフハッカー」への寄稿は高い評価を得ている。
被災者になって、個人が発信することの大切さに気づいた
「人生のピークは80歳だと思っているので、(現在の)52歳なんてまだ成長途中。気分的には28歳です。なので、若者から年上扱いされると『まだ君たちと同じように学んで成長している最中なのに……』という違和感しかないです(笑)」
「さとなお」の愛称で知られる佐藤尚之さんは語る。ソーシャルメディアを軸としたコミュニケーション活動を推進する株式会社ツナグ代表であると同時に、被災地への迅速で正確な情報提供を実現するための公益社団法人「助けあいジャパン」会長。若い世代と触れ合う機会が多いからこそ、そう感じるのかもしれない。が、そもそも1985年に入社した電通に代表される広告業界自体、若さが重要な意味を持つ場所ではあった。
「20代で大きな賞を取って以後の数年がピーク。でも,そこで消えちゃう人が意外に多いし、若くして成功すると成功体験を繰り返そうとして自己模倣という悪循環にはまる。そういうの見てきたので『ピークは遅いほうがいいな』って思うんです」
さとなおさんがサイト「www.さとなお.com」をスタートしたのは、インターネット創世記の1995年。配属先の大阪で体験した阪神・淡路大震災がきっかけになった。
「1995年の1月に被災者になって気付いたのが、個人が発信することの大切さ。『ここで人が救助を求めてる』というような小さいけど必要な情報を現場から個人が発信できることが本当に大切だと痛感したんです。だいたい1月17日当日に、マスメディアは全国放送で『この規模の地震が首都圏で起こったらどうなるか?』っていう特集をやってたんですよ。神戸ではたったいま人が埋まっているのに。ありえないじゃないですか」
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