なぜ阪神・淡路大震災の教訓を生かせなかったのか――「助けあいジャパン」の創始者に聞く:働くこと、生きること(前編)(2/3 ページ)
公益社団法人「助けあいジャパン」の創始者・佐藤尚之さんは、阪神・淡路大震災を経験し、個人が情報を発信することの大切を痛感したという。その後、ネットを中心に、情報発信を続けてきたが、東日本大震災のときにはうまく機能しなかった。その理由は……。
ソーシャルメディアもまだまだ脆弱
だからこそ、個人に必要な情報を発信できるインターネットに可能性を感じた。
「個人が世界に向かって限りなくタダに近い金額で発信できる媒体を持ったのは有史以来初めてですから、やらないと嘘だと思いました。当時はまだ、日本にサイトが100個ぐらいしかなかった時代ですけど、僕は表現する技術を持っていたからよかった。コピーライターでもあったので、書けるわけですよ。広告文を書いていたので『人が嫌な思いをする表現はしない』というのが前提でした。今で言う『炎上』の境界線が分かっていたので、人間関係も含めてわりとラッキーな状態で始められましたね」
だとすると2011年の東日本大震災では、16年の間に蓄積されたノウハウが生かされたのだろうと思いきや、決してそうではないのだという。
「阪神・淡路大震災後、我々はいろんな技術を身につけました。だから阪神・淡路大震災でできなかったことも、東日本大震災ではクリアできると思った。ところが東北のおじいちゃんやおばあちゃんは携帯も使ってないからネットが全然使えなかったし、救援物資のマッチングもできなかった。そこで壁にぶち当たったんです。完璧なネット社会になるまでには、あと10年か20年かかるでしょうね。ですからリアルとバーチャルでの両方のつながりを持ったものを作らないと、ソーシャルメディアもインフラとしてまだ脆弱(ぜいじゃく)だと思うんです」
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