コラム
ブラック「企業」という捉え方で、ブラック「業界」問題から目を背けないで:メディアとWebと人材と(1/3 ページ)
8月11日に「ブラック企業大賞2013」が開催されました。大賞を受賞したワタミフードサービスにとっては不名誉な賞だったと思います。今回はブラックな「企業」ではなく、「業界」という単位で考えてみたいと思います。
8月11日に開催された「ブラック企業大賞2013」では、ワタミフードサービスに大賞という不名誉な賞(?)が与えられました。
ワタミは2008年に入社2カ月の社員が自殺したことで、ブラック企業として認知されたようです。もちろん問題外ですし、そのようなことは人として許せません。
ただ、誤解を招く言い方かもしれませんが、「ワタミ=ブラック企業」で議論を終わらせてしまうのはどうかと思います。ワタミだけがブラック企業と言うのではなく、「飲食業=ブラック業界」という問題の捉え方をするべきではないでしょうか。
ワタミでも同業他社と比べたらマシ!?
ワタミの渡辺美樹会長は、ワタミがブラック企業であるという批判に対して、
- 離職率は同業種の平均離職率48.5%を下回り、ワタミは42.8%(全産業の平均は28.8%)
- 平均年収は433万円で同業種の370万円を上回っている
- 時間外労働時間は月平均38.1時間。三六協定の上限である45時間を下回っている
- メンタルヘルスの不調による休業・退職者の人数は低水準
と、反論したそうです。
私は、飲食業での経験はバイトですらしたことがないので、ワタミや飲食業の実態がどうなのかは分かりません。ちょっと検索して調べてみたところ、「バイトなどの非正規を除いた話ではないか」といった批判も見つかりました。そういった批判は見逃せないとしても、このワタミ・渡辺会長の反論を聞く限り、ワタミよりもブラックな飲食系の企業はたくさんありそうです。「ワタミ=ブラック企業」と問題視するよりも、「飲食業=ブラック業界」という論点を持つべきだと私は考えます。
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