「ブラック企業かどうかは、人それぞれ」――この発言が怖い理由を考える:サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(1/3 ページ)
過労死などのニュースが流れたとき、残業時間を聞いて「俺なんて普段からもっとサビ残しているぞ」「この程度でブラックなら、うちの会社は真っ黒だ」などと言ったことはないでしょうか。こういった発言で問題をあいまいにすることが、実は自分たちの首を絞めているのです。
連載「就活・転職のフシギ発見!」とは?
就活や転職、若年層を中心としたキャリアについて、仕事柄仕方なく詳しくなったサカタカツミが、その現場で起きている「当事者たちが気付いていないフシギ」について、誰にでもスルッと理解できるように解説するコラム。
使えない部下が毎年出現するのはなぜなのか? その理由も、垣間見えるはずです。
著者プロフィール:サカタカツミ
クリエイティブディレクター。1967年生まれ。長年、就職や転職、キャリアに関するサービスのプロデュースやブレーンを務めている関係で、就活や転職には詳しい。直近でプロデュースしたサイトは「CodeIQ」。著書に『こんなことは誰でも知っている! 会社のオキテ』、『就職のオキテ』がある。
個人的に書いている就活生向けのブログは、なぜか採用担当者たちから「読んでいて心が痛くなります。ホントにつらいです」という評価を受けている。Twitterアカウントは@KatsumiSakata。
「ブラック企業」という言葉の意味は意外と曖昧?
先日、就活関連のイベントの打ち合わせをしているときに、ある言葉についてどう取り扱うかについて、議論が別れるところになりました。それは「ブラック企業」という言葉。
この言葉、最近出てきたものだと思われているかたも多いでしょう。実は、人材業界ではかなり古い言葉なのです。ただ、使われ方が今とは少し違っていて、例えば、(求人広告の制作会社に)支払いが遅れる、仕事上での条件面での齟齬がすぐに発生する、担当者の人格に問題があるなど、クライアントとして「ちょっとどうだろう、この会社」という、表現は適切ではないかもしれませんが“少しひっかかる企業”のことを、隠語として「あそこはブラック(リスト)企業だから」という風に呼んでいた記憶があります。そんなわけで私には、いつの間にか違う意味で日の目を見てしまった言葉、という印象が強いのです。
その打ち合わせの席で、ある人がこんな風に言いました。「ブラック企業は就活生が気になる言葉だから、取り上げたいという気持ちもあるのですが、バズワードだという気もするので、慎重にしたいです」
バズワード。要は流行語のようなものであるといいたかったのでしょう。定義が曖昧で、つかみどころがないけど、多くの人の口の端に上る言葉。でも、「ブラック企業とはどういう企業を指していますか?」と質問されたら的確に答えるのは難しい。
「長時間の残業を強いる企業だろ」とか「サビ残(サービス残業)ばかりの企業のこと」とか「低賃金で重労働ばかり」「デスマデスマデスマの会社だよね」「パワハラやセクハラが横行している職場のことでしょう」「要は離職率が高い会社のことじゃないの、結果として」「嘘つき企業だよ、イメージ先行で」
ブラック企業とは? と私の身近な人に質問してみたところ、上のような台詞が返ってきました。どれも的を射ている気もしますし、さりとてすべてを的確に表しているとも言いがたい。持つイメージとは反対に、“ふんわりとした”言葉であるがゆえに、メディアでも頻繁に取り上げられるようになりましたし、ブラック企業を公表することを選挙公約に盛り込むという話が飛び出たりしたのでしょう(結果としては盛り込まれませんでしたが)。まあ、定義が曖昧な言葉を企業にレッテルとして貼るのはどうか、という議論の余地もあると思いますから、ここではその是非は問題にしません。
重要なのは、ブラック企業という曖昧な言葉であっても、そこで行われていることの多くは「適法ではない可能性が高い」ということ。なぜ違法な状態がまかり通ってしまうのか、そのいくつかの理由を本記事で考えてみましょう。
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