「ブラック企業かどうかは、人それぞれ」――この発言が怖い理由を考える:サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/3 ページ)
過労死などのニュースが流れたとき、残業時間を聞いて「俺なんて普段からもっとサビ残しているぞ」「この程度でブラックなら、うちの会社は真っ黒だ」などと言ったことはないでしょうか。こういった発言で問題をあいまいにすることが、実は自分たちの首を絞めているのです。
「ブラック企業がどうかは人によって違う」という風潮はなぜ怖いのか
劣悪な環境で働いている、その結果過労死になった、とニュースなどで報じられ、その労働環境の数字(主に残業時間などですが)が出た途端、こういう反応を示す人は少なくありません。
「俺なんて、普段からもっと残業しているぞ」
理解に苦しむリアクションですが、周囲にこういう発言をする人は意外とたくさんいるはずです。自分だってもっと働いている、残業時間はハンパない、この程度でブラック企業というならば、自分の会社は漆黒だよと揶揄(やゆ)する人もいます。自分たちの若いときの話を持ち出して、会社のソファーで寝たとか、朝起きたら自室のベッドでスーツ姿のママだった、という武勇伝を話しだす人もいます。そして、この類の話をする人たちは、こういう台詞で話をまとめるケースが多い点が見逃せません。
「まあ、ブラックかどうかなんて、人それぞれだからね」
先にも書きましたが、ブラック企業という言葉の定義は曖昧で、「これをやったらブラック企業認定」という基準もありません。しかし、法令遵守がなされない労働環境を、同じ働く人が「そういうこともあるよね」と済ませてしまうどころか、それを認めた上で「それを乗り越えることを美化する」のはいかがなものでしょう? そう反論すると、“ブラック企業なんて人それぞれ派”は、こう続けます。
「過酷な労働条件の中、一生懸命働いた経験が、その後のビジネスパーソンとしての糧になるというケースはいくらでもある。理不尽な思いや、辛いことを乗り越えて成長するのが人間。それをしなくてもいい、となってしまうと人は成長しない」
だから、人によってはその経験が「素晴らしい糧」になるかもしれないし、ブラック企業にいて限界だった、と判断するかもしれないと。もっともらしい理屈ですが、だから法律を守らなくても良い、という理由にはなりません。皆さんも学生時代に、労働基準法、労働組合法、労働関係調整法のいわゆる「労働三法」について習ったと思います。それらは、そもそも、企業と労働者との力関係を比べたときに、どう考えても働く人が弱くなる、それを守るために最低限これだけは守ってください、と決められたルールです。そう、自分自身を守ってくれる決まりごとを、とらえ方次第だよと曖昧にしてしまい、返って自分たちの首を締めてしまっているのです。
就活生が、企業研究や自分探しと同じようにやるべきこと
少なくとも法律が守られるようにするために、多くの人ができることが一つだけあります。それは、その法律をきちんと理解することです。以前にもある場所で書いたのですが、働き始めるときに就業規則に目を通していない人が多すぎる気がします。自分たちがどういう条件で働くのか、なにを要求され、遵守しなければならないのか。一定規模の企業はその規則を作成しなければなりません。しかし、それを「見たことない」という人は多いはず。まずは、そこから関心を持ち、目を通す必要があると思うのです。
その上で、最低限「労働基準法(参照リンク)」という法律があるのを知っておくこと。時間が許せば簡単に目を通しておくと良いでしょう。就活生の皆さんは、企業研究や自分のやりたいこと探し、自己分析も大切です。ブラック企業とインターネットで検索して、そこに入社しないという行為も重要でしょう。しかし、それと同じくらい、自分たちの立場を守る決まり事があり、そして、それらを企業が守っているかどうか知ることも、就活には必要不可欠なのです。
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