人事担当者と「社史」のキケンな関係:サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(1/3 ページ)
最近「会社の歴史を従業員に伝えたい」という相談を、複数の人事担当者から受けたというサカタさん。人事が急に「創業者の思いを……」などと言いだしたら注意だ、というその理由は?
連載「就活・転職のフシギ発見!」とは?
就活や転職、若年層を中心としたキャリアについて、仕事柄仕方なく詳しくなったサカタカツミが、その現場で起きている「当事者たちが気付いていないフシギ」について、誰にでもスルッと理解できるように解説するコラム。
使えない部下が毎年出現するのはなぜなのか? その理由も、垣間見えるはずです。
著者プロフィール:サカタカツミ
クリエイティブディレクター。1967年生まれ。長年、就職や転職、キャリアに関するサービスのプロデュースやブレーンを務めている関係で、就活や転職には詳しい。直近でプロデュースしたサイトは「CodeIQ」。著書に『こんなことは誰でも知っている! 会社のオキテ』、『就職のオキテ』がある。
個人的に書いている就活生向けのブログは、なぜか採用担当者たちから「読んでいて心が痛くなります。ホントにつらいです」という評価を受けている。Twitterアカウントは@KatsumiSakata。
一足早い夏休みでイタリアに行っていた編集長の吉岡綾乃さんと話をしていた時のこと。綾乃さん曰く「トレビの泉の前に立って、写真を撮りながら『ああ、これがトレビの泉だな』と思いつつ『だからどうした私』とも考えちゃったんですよね。違和感でもない、なんというかちょっと不思議な感覚で、上手く言葉にできないんですけど」と。
トレビの泉よりも、道中いろいろ食べまくっていたイタリアの美味そうな料理の写真を見せてよね、と言いながら、私は「だからどうした、って感覚が分からない人事には困ったものだ」という話を思い出していたのです。
ローマの超有名観光スポット「トレビの泉」には世界中の観光客が集まって、押すな押すなの大変なにぎわいっぷり。確かに彫刻がきれいな泉(噴水?)だけど、ローマの街なんてあちこち素敵な彫刻だらけなわけで、だからどうした、という……クリックすると、人がいない状態の写真を見ることができます
会社の歴史を伝えていきたいと、企業の人事に相談を受けた
先日、ある企業の人事から会社の歴史を従業員に伝えていきたいので、上手い方法はないかと相談を受けました。その相談の内容に驚いたのもさることながら、似たような相談を同じ時期に立て続けに見聞きしたこともあって、私は「いま、人事の間で社史を編纂するブームが来ているのか」と錯覚を起こしたほどです。彼らに「どうして社史を従業員に伝えたいのか」と質問すると、予想通りの答えが返ってきました。
「我が社は過去に画期的な製品やサービスを世に送り出してきています。当然、新卒採用時にはその話を学生に熱心にして、そういう歴史なり社風なり、企業のキャラクターとでも表現すればいいのでしょうか、そこに惚れ込んで入社してもらおうと心がけています。しかし、中途入社の人はその教育が十分じゃなくて、今の仕事やこの職場で働くことに、プライドというか、自信を持っていない気がするのです」
その結果、従業員の士気が下がったり、与えられた仕事に熱が入らなかったり、挙げ句の果てには退職してしまうケースもあるのだとか。だから、あなたはこんなに素晴らしい歴史と伝統を持った、そしてこんなに世の中に認められてきた企業の一員であることに誇りを持ってほしい、というレクチャーを企業の歴史を通して行いたいと、相談をしてきた人事は考えていたようです。
これを聞いて、私が頭を抱え込んでしまったのは言うまでもありません。そんなことをしても、すでに掛け違えたボタンを直すことはできない。そのことに、彼らは気がついていないのですから。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」:あなたの仕事は、誰かの「困った」を「良かった」に変えていますか?
子どもの頃「大人になったら何になりたい?」と聞かれたことはありませんでしたか。また就活生から「働くってどういうこと?」と問われたら、あなたは何と答えるでしょうか。今回は“仕事の本質”について考えます。
サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」:「夢を持て」という言葉が罪作りな理由
「夢を持つことは大切だ」さらに「願えばかなう」――そう言う人は多いですが、自分の将来について考え始めている子どもに対してそう言うことは罪作りだとサカタさんは言います。その理由は……。
サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」:「いつかは転職したい」では転職できない理由
「いつかは転職したい」――長く働いているビジネスパーソンなら、1回くらいは考えたことがあると思います。しかし仕事柄転職相談を頻繁に受けるサカタさんは「それでは転職できない」といいます。転職市場において、もっとも大事な価値とは?
サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」:子どもが就職できるか心配――そんな「お父さんのための就活講座」
昨今、テレビやビジネス誌などでは「親子就活」特集が花盛りです。「親が就活に参加するの?」と批判的な人も、いざ自分の息子や娘が就活となればやはり心配なもの。サカタカツミ流親子就活講座、今週は「お父さん編」をお送りします。
サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」:「あなたの挫折経験を教えてください」と人事が質問する理由
「挫折経験」「挫折」「挫折の経験」……本連載の筆者、サカタさんのブログに就活生がたどり着く検索ワードで圧倒的に多いのが「挫折」だそう。なぜそんなに挫折について知りたいのでしょうか? そこには意外な事情がありました。
サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」:中高年を襲う「新しい肩たたき」の手口が巧妙になっている
ネットで「こういう仕打ちを受けて、辞めるように追い込まれた」という悲痛な声を聞くことがあります。整理解雇ができない企業の“肩たたき”テクニックは年々巧妙化しており、肩書きがある人でも、安泰ということはありません。
