日本で起きている皮肉な現象とは――留学生と採用の関係:仕事をしたら“なんちゃってグローバル君”がいた(6)(5/6 ページ)
日本人の留学者数が、ここ数年減少している。このまま留学生の数が減っていけば、「海外の企業に勝つことが難しくなるのでは」と危惧する人物がいる。その名は、人材紹介などを手がけるディスコの夏井丈俊社長だ。早速、夏井社長に話を聞いてきた。
“職歴レバレッジ”を効かせた働き方
土肥:若い人の働く場所がない、というのは大きな問題です。そんな状況が長く続いていますが、夏井社長はフィリピンである若者に出会われた。その彼の働き方を見て、“職歴レバレッジ”の可能性を感じたそうですね。その職歴レバレッジってどういう意味でしょうか?
夏井:フィリピンのマニラに行ったとき、ある青年がいたんです。その彼に、ここで何をしているんですか? と聞いたところ「こっち(マニラ)で就活をしました」と言っていました。詳しく聞いてみると、彼の周囲には自分と同じような形で就職している日本人が最近増えてきている、ということでした。この話を聞いたとき「アリだな」と思ったんですよ。
というのも「学歴ロンダリング」という言葉がありますよね。例えば、東京大学に入学するのはものすごく難しいけれど、東大の大学院に入学するのはそれほど難しくない。ネームバリューのある大学院に進学することで、最終学歴に“箔をつける”――。そうした行為のことを、「学歴ロンダリング」と呼ばれています。
マニラで就職した学生は、日本の大手企業に就職ができませんでした。しかしアジアで仕事をすることは、彼にとって大きな“武器”になるはず。もちろんただ単に働くだけでは意味がありませんが、数年働くことによってマネジメントスキルを身につけることができれば、今度は多くの日本企業が「ウチで働いてみないか?」といった声がかかるでしょう。
この青年のように「日本で就活をしたけれど、内定がもらえなかった」という人は、思い切って海外で働いてみるのもいいかもしれません。卒業後は海外で働き、そこでキャリアを積んで、日本企業で働く――。「ロンダリング」という言葉はマイナスイメージがあるので、こうした働き方を「職歴レバレッジ」と呼んでみてはいかがでしょうか。
土肥:なるほど。海外で実績を積んで、パワーアップして帰国する。そういう意味ではロンダリングというよりも、レバレッジという言葉のほうがしっくりきますね。でも卒業後、いきなり海外で働くってリスクがありますよね。そもそもそんな情報って、どこで手に入れたらいいのでしょうか。
夏井:その青年は「とりあえず、マニラに来た。そして仕事を探して回った」と言っていました。「現地に行けば、なんとかなるだろう」という考え方ですね。でもそのくらいの大胆さがないと、海外で働くことは難しいと思う。現地の人と同じ生活レベルでもいい、といった人でないと、働き口が見つかっても続けることは難しいでしょうね。
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