「はだしのゲン」がバカ売れ、仕掛けたのは誰か?:窪田順生の時事日想(1/4 ページ)
小学校での閲覧制限を受けて「はだしのゲン」が前年の3倍売れて在庫がなくなったという。国による制限は、日ごろ注目されない人を喜ばせるだけだ。
窪田順生氏のプロフィール:
1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
松江市教育委員会が、『はだしのゲン』の閲覧制限を撤回した。
「あんなもの即刻撤去だろ」と訴える人たちが問題視するのは、旧日本軍にかかわる描写だ。アジアの人の首を面白半分に切り落とす。妊婦の腹を切り裂いて、中の赤ん坊を引っ張り出す。女性を惨殺するという描写が、いくらマンガとはいえデタラメが過ぎるんじゃないのというわけだ。
確かに子供はマンガによって誤った歴史認識を植え付けられる。かく言う筆者も、『はだしのゲン』を図書館の隅っこで読んで、登場する残虐な日本軍の姿から、「こいつらは人間じゃない」なんてショックを受けたひとりだ。この作品を『マンガ日本の歴史』の延長で読むという子供は今も少なくないはずだ。
そういう点では、この訴えも分からんでもない。が、閲覧禁止はちょっといただけないと思っている。というのも、この手のものは茶々を入れると、非常にいい「宣伝」になるからだ。
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