年金分割が始まっても、熟年離婚が増えなかった理由とは?(2/2 ページ)
3組に1組の夫婦が離婚する時代。特に30、40年と連れ添った熟年の夫婦が離婚するとなると、問題は山積です。長年の蓄積を清算するのは大変ですが、実際、どうしたら良いのでしょうか? 今回は「離婚時の年金分割制度」について紹介します。
2.試算の重要性
2つめは試算の重要性です。「年金分割のための情報提供通知書」を発行してもらい、見込額を知った上で老後のキャッシュフロー表を作りましょう。厚生年金の場合は年金事務所で、共済年金の場合は共済組合で無料で発行してくれます。ここでは分かりやすく、夫が妻に年金を分けるというケースに絞って見てみましょう。
制度において「年金を分割することで65歳からもらう年金が、夫より妻のほうが多くなってはいけない」というのがあります。これは夫婦共働きの場合に起こる現象ですが、どんな場合でもこのルールに抵触していないことを証明する必要があります。
年金分割のために情報提供通知書を取得する理由は何でしょうか? ルールに違反していないかということと、老後の生活設計を試算するためです。先にも述べましたが「年金分割のための情報提供通知書」は、年金事務所(共済組合)に申請書と戸籍謄本を提出すれば、無料で発行してくれます(2〜3週間待ち)。50歳以上だと、具体的な試算を発行してくれます。ただし、これは現時点で年金をもらった場合の試算です。まだ今後も年金を納めていくので、金額は変動していきます。
3.年金の見込みと離婚の是非
3つめは年金の見込みと離婚の是非です。分割できる年金が少なすぎて生活の目処が立たない場合、それでも離婚すべきかどうかです。実際、年金分割が始まっても離婚件数は増えなかったのですが、それはなぜでしょうか? それは妻が夫の年金をもらったところで、結局、離婚しても生活が成り立たないから。試算すると、そのことが明らかになり、離婚への歯止めになったのです。
例えば、離婚しない場合、夫婦の収入は夫の収入+夫の年金+妻の収入+妻の年金で、今までの生活水準を維持することができます。
一方、離婚する場合、妻は妻の収入と年金に加え、夫の年金の2分の1を足した分で生活しなければなりませんが、夫は夫の収入と年金の半分で生活しなければなりません。後者の場合、二重生活になり生活費や家賃は約2倍になるので、その分負担は重くなるというわけです。
しかも、最近は晩婚化や高齢出産の増加で、夫婦が60歳でも子供が大学生というケースもあります。そうすると、限られたお金のなかで夫はどうやって養育費を払うのか、妻は子供を育てるのかという問題もあります。それも、熟年離婚のハードルを高める一因になっているのです。(露木幸彦)
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