仕事で他の人に差を付けるには? 池上流「選挙特番の作り方」――池上彰×吉岡綾乃(後編):これからの働き方、新時代のリーダー(6/6 ページ)
7月に参議院選挙が行われた夜、民放各局が選挙特番を放送する中で圧勝したのは池上彰さんが司会をしたテレビ東京でした。あの番組はどのように作られたのか? 池上×吉岡対談後編は、不利な条件下でも他の人に差を付ける仕事をするための考え方、池上さんの読書法に迫ります。
候補者のプロフィールが“脱力系”だった理由
吉岡: あと印象に残っているのは、当選確実のときに出てくる候補者のプロフィールです。他にない試みだし、すごく面白かったんですけど、あれは誰が調べているのですか。
池上: あれは去年の衆議院選挙でやってウケたので、夏の参議院選挙でまたやったのですが、今回は専門のリサーチャーが徹底的に調べて、スタッフでかなり揉んでいますよ。特に参議院って衆議院に比べてあんまり名前の知られている人がいないでしょう? 知らない名前と顔と政党名と選挙区名だけ見ても、面白くない。だからプロフィールをつけよう、どうせなら目に止まるように徹底的に脱力系のプロフィールにしよう、と。
吉岡: 他局がみんな同じ番組をしていたために、見事な差別化になりましたね。
池上: そうですね。TBSはあの日、『半沢直樹』を放送していれば一人勝ちしたはずなのに、「選挙なんだから、選挙特番をやらなければいけない」という使命感があって(放送した結果)、午後9時台は視聴率2.8%(関東地区)という悲惨なことになってしまったわけでしょう。北海道地区は1%を切ったそうですから。
ただ、この番組のやり方がいつでも成功するわけではありませんよね。今回の参議院選挙はあらかじめ結果が予想されていたから、みんなそれぞれの出口調査の結果をばーっと見た後にテレビ東京を見てくれた。でも次の選挙の時、ひょっとしてまた政権交代があるかどうかという状態だったら、その時はまた違う視点で番組を作らなくてはいけないよということ。一度成功したから次もその通りに成功するということは絶対ないですから、常に、今できるベストを考えなければいけないですよね。
吉岡: 池上さん、とても勉強になりました。ありがとうございました!
→キュレーションで効率的に情報収集」の落とし穴――池上彰×吉岡綾乃(前編)
池上 彰(いけがみ あきら)
ジャーナリスト。1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。社会部記者として経験を積んだ後、報道局記者主幹に。1994年4月から11年間「週刊こどもニュース」のお父さん役として、様々なニュースを解説して人気に。2005年3月NHKを退局、フリージャーナリストとして、テレビ、新聞、雑誌、書籍など幅広いメディアで活躍中。
『伝える力』、『そうだったのか!現代史』、『この日本で生きる君が知っておくべき「戦後史の学び方」 池上彰教授の東工大講義』、『学び続ける力』など、著書多数。
吉岡綾乃(よしおか あやの)
Business Media 誠編集長。慶應義塾大学大学院文学研究科東洋史学専攻修了。1997年、ソフトバンク出版事業部(当時)に新卒入社。「DOS/V magazine」編集部へ配属され、PC雑誌の編集者として経験を積む。2005年、アイティメディアに入社。「ITmedia +D Mobile」編集部で記者としてキャリアを積んだ後、「ITmedia ビジネスモバイル」(2005年)、「Business Media 誠」(2007年)の立ち上げを担当し、今に至る。
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