オリンピックの開催国で「デモ」や「暴動」が増える理由:窪田順生の時事日想(3/3 ページ)
2020年の夏季五輪が東京に決定した。ほとんどのメディアがこのニュースを“お祭り”ごとのように報じているが、光のあるところには必ず影ができる。五輪の恩恵を受けられない人たちの不満が、祭りの前に爆発するかもしれない。
巧妙な中国
一方、なかなか巧妙なのが中国だ。
最近、中国メディアが「日本と韓国の関係が急速に悪化」とか、「韓国人の反日は中国の比ではない」とかやたらとうれしそうに報じている。
ご存じのように、2018年には韓国の平昌(ピョンチャン)で冬季五輪が開かれる。サッカー場でもあんな調子なのだから、どうせここでも「独島」や「慰安婦」がどうしたなんて横断幕を出すのは目に見えている。一方、日本でも開催決定後、ヘイトスピーチが復活。韓国へ憎悪を募らせる人も多い。また、「汚染水問題」もあるし、被災地の方たちの怒りもハンパではない。セオリーどおりなら、2020年前にはこういう方たちの「不満」が一気に爆発する。
なんて調子で、日韓が乱れれば、北京五輪以上の恥をかかせられる。自国以外を臣下(しんか:君主に仕える者)のように思う「中華思想」ならではの歪んだ発想だ。
そんなの考え過ぎだろ……と思うかもしれないが、56年前の「東京オリンピック」では開催中、わざわざ中国で初となる核実験をぶつけている。自分たちは出場していないのに、台湾が「国家」扱いされていることに対してカチンときたからだ。
こういう国々に日本は囲まれている。うれしいのは分かるが、あまりうかれていると、足元をすくわれることになる。
前回の「東京オリンピック」のテーマソング、「東京五輪音頭」のなかには、そんなオリンピックの“うかれ具合”が実によくあわれている歌詞がある。
きみがはやせば、わたしはおどる
今回も踊り出したい気持ちはよく分かる。ただ、日本の周囲にいる“きみ”はかなり難がある。ワケのわからぬ“はやし”に踊らされぬよう用心して、2020年を成功へと導きたい。
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