連載
シリアは化学兵器を差し出すのか? それでも内戦は終わらない:藤田正美の時事日想(3/3 ページ)
ロシアの「化学兵器を国際管理下に置く」という提案に対して、米国のオバマ大統領は「事態を打開する可能性がある」と評価した。果たしてシリアのアサド大統領はどう動くのか?
とりわけサウジアラビアやトルコはアサド政権の打倒を望んでいる。しかしアサド大統領を政権の座から引きずり下ろすことは、米国にとって必ずしも望ましくない。なぜならアサド大統領が追われた後、政権の座をめぐって反体制派の中で権力争いが起きることが必至だからである。
そうなったらイスラエルにとっては悪夢といってもいい。安定しない反イスラエルの政権ほど勇ましいことを口に出しがちだし、その中で一部が過激になる可能性もあるからだ。そのときにはイスラエルもやられるまで黙って待っていることはしない。先制攻撃が行われ、中東はさらに不安定になっていく。
シリアを支持するイランは、もしもイスラエルがシリアを攻撃するようなことがあれば、これも黙ってはいないだろう。せっかくイランに穏健派の大統領が生まれたところだというのに、再び緊張が高まってしまう。
ロシアの提案をシリア外相は前向きに受け止める発言をしたが、果たしてアサド大統領はどう出るか。化学兵器を使っていないと明言している大統領が、備蓄の存在を認め、それを国際管理下に委ねるということが本当に可能かどうか。もしそのハードルが越えられるなら、シリア危機がこれ以上悪化することだけは避けられるかもしれない。ただそれでも2年以上続いているシリアの内戦そのものが解決に向かうわけではないということも忘れてはなるまい。
関連記事
- 米国がシリアを攻撃すれば日本経済にも影響が出る
シリアの内戦で化学兵器が使われた可能性が濃厚になった。誰が何の意図をもって使ったのかは定かではないが、米国はシリアに対して懲罰攻撃を行うという。 - なぜシリアは空爆されるのか? 日本よ、本当の外交に目覚めろ
筆者は「日本は米国を支持すべきではない」と考えている。日本はシリア人からも尊敬の眼差しで見られているからだ。日本だからこそできる外交がある。 - 尖閣諸島問題の行方は? 日本外交の構想力が試される
尖閣諸島の国有化をめぐり、緊張が高まる日中関係。10年に一度の中国指導部の交代を控え、その対立は終結する気配はない。 - 外交力が第2次安倍内閣の行方を左右する
安倍首相には長期政権になってもらわなければならない。そのためには「憲法改正」や「歴史問題」を封印しつつ、日本の立場を経済的に、そして外交的に強めることに専念すべきだ。 - 藤田正美の時事日想バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.