最初は売れなかった? これまで語られなかった「じゃがりこ」の裏話:これからの働き方、新時代のリーダー(前編)(6/6 ページ)
「じゃがりこ」といえば、カリカリ・サクサクした独特の食感が特徴だ。カルビーが1995年に発売して以来、ロングセラー商品となっているが、開発秘話はあまり知られていない。開発に携わった担当者が多くを語らなかったからだが、18年経った今、当時の裏話を打ち明けてくれた。
エビの天ぷらには赤い尻尾が必要
土肥:甲斐さんはこれまで、さまざまな業界の広告に携わってこられました。お菓子だけではなく、時計(シチズン×福山雅治プロジェクト)、ファッション(丸井の水着、浴衣)、飲料(キリンビバレッジのSupliなど)、教育(ユーキャン)など、ここでは紹介し切れないほどあります。また、数々の賞を受賞されてきました。
そんな人に、ちょっとド素人な質問をさせてください。例えば、人気ナンバーワンの俳優と女優を起用すれば、その広告は話題になるはず。そして、その商品もヒットするのではないでしょうか。
甲斐:最初に大きな花火を打ち上げると、一瞬効果はあるのかもしれません。しかし商品と広告のマッチングがうまくかみ合っていなければ、長くは続きません。つまり、“やり逃げ”になっていまう。ただ、こうしたケース……実は多いんですよね。
土肥:なるほど。
甲斐:広告というのは、消費者に向けて発信する――これは大前提としてあります。ただ外に向けてだけではなく、内に向けても発信しているんです。
土肥:どういう意味でしょうか?
甲斐:ある企業が新商品を発売したとします。私たちの仕事は、その商品にどんな“服”を着せたらいいのかを考え、提案していかなければいけません。そのバランスがうまくいったとき、ヒットにつながりやすい。そこで消費者のハッピーを生み出すことになるのですが、同時にその商品に携わっている人たちのハッピーも生み出すことができる。そのお手伝いができたとき……「この仕事をやってきてよかったなあ」と思える瞬間ですね。
尊敬する有名なコピーライターの仲畑貴志さんは、このようなことを言っていました。「エビの天ぷらがあって、そこに赤い尻尾があるから、それはエビの天ぷらたりえる。尻尾がなくてももちろんエビの味はするし、味に変わりはない。でも尻尾があることでよりおいしそうに見えたりする。その尻尾をくっつける作業が広告の仕事でありブランディングである」と。この言葉を聞いたとき、「なるほど。私たちの仕事はそういうことか」と腑に落ちたものです。
土肥:おお、分かりやすいですね。エビの天ぷらの尻尾を見るたびに、この話を思い出しますよー(笑)。
そんな甲斐さんは現在でもCDとして活躍されていますが、生まれ育った街の地域活性化プロジェクトにも関わっているとか。そのへんの話も聞かせていただけますか?
甲斐:分かりました。
(つづく)
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