台湾で「なめこ列車」が走っていた――日本でもどう?:杉山淳一の時事日想(3/4 ページ)
人気キャラクターでローカル鉄道を活性化する。それは日本だけではなかった。台湾のローカル線でも観光キャンペーンでキャラクターとのタイアップが行われており、なんと今年は日本のゲームキャラクター「なめこ」が採用された。その経緯と効果を聞いた。
「なめこ」は台湾でも人気のキャラクター
「なめこ」と「集集線」のコラボレーションについて、開発元のビーワークスと、海外向け展開を手がけるドリームズ・カム・トゥルー社に聞いた。
コラボレーションのきっかけは集集線側からだった。集集線では毎年、夏期観光キャンペーンを実施しており、これまで台湾国内のキャラクターを採用してきた。より正確に言うと、集集線の夏期観光キャンペーンを主催する南投県政府と台湾の交通部観光局から「なめこ」を使いたいという申し出があり、キャラクターの使用についてビーワークスとサクセスが承認した形だ。
夏期観光キャンペーンはファミリー層をターゲットとしており、なめこラッピングトレインは目玉企画として、「ファミリー層への楽しさを提供」できるコンテンツとして認められた。「なめこ」は台湾でも大人気のキャラクターで、人口に対するアプリダウンロード率は日本より台湾のほうが高いそうだ。「なめこ」は台湾の国民的人気キャラクターのひとつだという。こうした背景もあって、台湾でホットなキャラクターとしてなめこが採用された。ラッピングトレインだけではなく、「なめこ駅長」が乗客をお出迎えし、沿線の名所・名産を紹介していたという。
集集線と製作・販売会社のメリット
集集線の「なめこ」採用には、どんなメリットが期待されていたのだろうか。夏期観光キャンペーンの主催者にとっては、人気キャラクターによる集客力だ。前述のように、「なめこ」は台湾でも大人気キャラクターで、親と子の両世代に支持されている。日本で「なめこ」関連イベントはにぎわっているように、台湾でも「人を集める」キャラクターとして期待できる。ファミリー層に訴求したい観光キャンペーンにピッタリというわけだ。
一方、権利者であるビーワークスとサクセスにもメリットは大きい。台湾政府直轄のイベントになるため、なめこが「政府が認めた適切なコンテンツ」と認識され、多くの人々に好印象を与える。集集線にとって海外キャラクターの採用が初であることから、「なめこ」にとっても海外展開にはずみがつくと期待される。さらに、日本で話題になれば「なめこ人気」をさらに活性化でき、日本の鉄道会社にもアピールできる。
日本で話題になるという意味では、主催者としても、日本からの観光客誘致に対する期待があったことだろう。
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