南場智子さんが語る、マッキンゼーの経験が役に立たなかった理由:『不格好経営』の著者が伝えたいこと(前編)(3/4 ページ)
社長を退任してから2年――。DeNAの創業者・南場智子さんが現場に復帰した。会社を離れていてどんなことを感じていたのだろうか。講演会で語った、南場さんの“今”をまとめた。
――壁にぶつかったときに、解決する考え方やアプローチの方法などは、マッキンゼーで学んだ部分が生かせているのではないでしょうか。
南場:それは自分でもよく分からなくて……10年くらい経ったら反省したほうがいいかもしれませんね(笑)。でも、うーん……どうでしょうか(笑)。
マッキンゼーで学んだことがゼロというわけではなくて、2つあります。1つは「論理的思考」。でも、私はもともと非常に論理的に考えるんですよ(笑)。でも論理的に考えたことについて、うまく表現することをマッキンゼーで学ばせていただきました。
もう1つは「とことん仕事をする」ということ。いまのマッキンゼーはどうか分かりませんが、私がいたころは、とことん仕事をしていました。例えば、朝の3時、4時に「あ、こうしたほうがいいかも」といったアイデアが浮かんだとします。そのアイデアを、朝の9時にクライアントの前でプレゼンをしなければいけないときでも、そこで寝る選択肢はありません。むしろ、「あと5時間もある。その時間内に修正できるぞ」となる。
このようにとことん働くのは当たり前の組織なので、「労を惜しまない」ということを叩き込まれました。
――ということは、今の仕事に役立っているということですね?
南場:そうですね……。(マッキンゼーの経験が役立っていないというのは)間違っていました(苦笑)。
――そのほかにも役立っていることがあるのではないでしょうか?
南場:著書にも書きましたが、私はマッキンゼーでものすごくうまくいっていました。なので「自分が事業を起こせば、もっとうまくできるんじゃないか」という幻想を抱いていました。それは見事に裏切られてしまいましたね。
あと、マッキンゼー時代には「お金に対する嗅覚」を磨くことができませんでした。キャッシュの怖さを学ぶ機会がありませんでしたから。クライアントは超優良企業ばかりなので、財務も磐石。キャッシュの心配をする必要がないんですよ。でもDeNAを起業したときにはゼロからお金を集めて……といった感じで、毎日キャッシュの心配をしていました。
関連記事
- 「永久ベンチャー」で有り続ける――南場智子氏、だからこそDeNAは強い
DeNA創業者で、現在は取締役としてDeNAの経営に携わる南場智子氏。6月に出版した『不格好経営―チームDeNAの挑戦』で驚くほど赤裸々に失敗談もつづっている。南場氏が本書に込めた思いを聞いた。 - なぜリブセンスにできて、リクルートでできなかったのか――成果報酬型のビジネス
ネット上にアルバイト情報はたくさんあるが、ここ数年「ジョブセンス」に注目が集まっている。なぜ企業はこのサイトに広告を出し、ユーザーは応募するのか。サイトを運営している最年少上場社長・村上氏に、ビジネスモデルなどを聞いた。 - なぜ給料が二極化するのか? 年収200万円と800万円の人
景気低迷の影響を受け、給料は下がり続けている――。そんなビジネスパーソンも少なくないだろう。では、今後10年間はどうなのか。リクルートで働き、中学校の校長を務めた藤原和博さんに「10年後の給料」を予測してもらった。 - ミドリムシが世界を救う? そんな時代がやって来るかもしれない
「ミドリムシ」と聞いて、どんなことを想像するだろうか。「青虫」「ミトコンドリア」などを思い浮かべる人も多いのでは。ミドリムシを増やして、地球そして人類を救おうとしている会社がある。その名は「ユーグレナ」。社長の出雲充氏に話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.