メジャーリーグでMVP級の大活躍――上原浩治はなぜ自らを「雑草」と呼ぶのか?:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(4/5 ページ)
メジャー5年目となった上原は、レッドソックスのクローザーとして圧倒的な信頼を勝ち得ている。チームはア・リーグ東地区を6年ぶりに制した。だが、海を渡るまでの野球人生は決してバラ色とは言い難かった。
“巨人のために”なんていう気持ちはこれっぽっちもない
条件は巨人のほうがはるかに良かった。水面下で10億円近い金額が動いたとも報じられた。エンゼルスは新人としては異例の高額契約金3億円を用意したが、メジャー契約ではない。マイナーの1Aならば月給で10万円強。メジャーは実力でカネを稼ぐところだと言われ、現実を知った。今のように日本人投手の評価が高い時代ではなかった。
10日間悩んだ上原は周囲の勧めもあり、最終的に安全な道を選んだ。両親や恩師、親しい知人に「メジャーの夢は日本で自信を付け、いつか必ず叶えるつもりです」と伝え、ドラフト逆指名制度を使っての巨人入団を決意したのだ。
しかし、心は晴れなかった。進路決断の会見後、上原は「巨人逆指名」の舌の根も乾かぬうちに関係者へ「逆指名って撤回できるんでしょうか?」と質問している。最後の最後までエンゼルスへの入団を諦め切れていなかったのだ。
こういう経緯で入ったから巨人では「チーム愛」を貫くことはできなかった。日本球界を代表する投手に成長できたのは「いつか必ずメジャーの舞台に立つ」という夢を持ち続けていたからだ。
「ボクは“巨人のために”なんていう気持ちはこれっぽっちもない。でも契約している以上はきっちり結果を出しますよ。仕事ですから」
巨人時代の上原は「オフレコ」として親しい人間に、こう本音を漏らしていた。よく言えば正直でストレート。悪く言えば自己中心的。だから、あまりのマイペースゆえに巨人では時として軋轢(あつれき)も生んでいた。
先発して降板すると直後にロッカールームへ。ベンチ裏ではストレッチとクールダウン、アイシング治療……。登板後は人一倍のケアを心がけていたからだ。だが、そんな上原に「降板後の戦況はベンチで見ることがほとんどない」とマユをひそめる巨人関係者も多かった。先発はマウンドを降りれば、ベンチでチームを応援するのが日本流のしきたり。それだけ上原の特異さが目についたのだ。
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