オリンピックが開催されても、鉄道網が整備されない理由:杉山淳一の時事日想(5/6 ページ)
2020年東京オリンピックの開催決定で、交通インフラの整備が活気づく。しかしJR東海はリニア中央新幹線の前倒し開業を否定、猪瀬都知事も鉄道整備に消極的だ。オリンピックは鉄道整備の理由にならない。それは1964年の東京オリンピックの教訓があるからだ。
東京近郊の整備・計画路線
少し視野を広げると、東京が目的地の航空需要という意味では、調布飛行場の再整備によって地方空港との路線を増やしたり、横田基地の一時的な軍民共用化、米軍が管制する横田空域の開放を検討すべきだろう。調布飛行場に隣接する武蔵野の森公園と東京スタジアムはオリンピック競技場であり、フェンシング、水泳、馬術、ランニング、射撃、サッカーが予定されている。
東京外かく環状道路の三郷南IC―市川JCTが2015年度、大泉JCT―東名JCT間が2020年オリンピックまでの開通を目標としている。首都高速横浜環状北線の生麦JCT―港北IC間は2016年度開通予定、その先の港北IC―横浜青葉ICは2021年度開通予定だが、1年の前倒しはできるかもしれない。
鉄道については相模鉄道の東京直通計画がある。相模鉄道の西谷とJR東日本の羽沢を結ぶ路線は2018年度、さらに羽沢から日吉へ延伸する路線は2019年度に開通予定だ。相模鉄道と湘南新宿ライン、東急東横線、あるいは目黒線との直通運転が始まる。
計画路線としては埼玉高速鉄道の浦和美園駅―岩槻駅間の延伸計画がある。さいたま市が積極的だが、こちらもなかなか進まない。浦和美園駅付近の埼玉スタジアム2002はオリンピックのサッカー競技を開催予定。線路はすぐそばに達しており車両基地がある。岩槻までは無理でも、せめてスタジアムに隣接する駅まで延伸したらいいと思う。
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