起業して「社長」になってもすぐに譲る、なぜ?――実業家・作野裕樹氏:働くこと、生きること(後編)(2/2 ページ)
実業家の作野裕樹氏は起業しても、すぐに「社長職」を他人に譲ってきた。多くの人は「社長」に憧れるものだが、なぜ作野氏はそんなことをするのか。その理由は……。
不景気の方ほうチャンス。日本の土台は整っている
話をうかがっていると、「人のためになりたい」という思いの強さを感じる。
「ただ、人のためだけでもだめなんです。自分のためであり、人のためでもあるべき。自分と他人の差をつけたくないんですよ。自分も他人だし、他人も自分。全部つながってるっていう発想。だから自分もよくなって他人もよくなることじゃないと、うまくいかないなと思いますね」
ところで作野氏はあえて、いまの時代を肯定的に見ているのだそうだ。「ITバブルが弾けたとき、たまたまそこにいて実感した」ことも影響しているというのだが……。
「そもそもいまは日本自体が、すごいチャンスであふれています。景気がよくないし、税金も高いじゃないですか。でも不景気ってチャンスだと思うんですよ。具体的に言えば、まず事務所の家賃が安い。事実、サブプライムショックやリーマンショックのとき、事務所の家賃の交渉をしたら簡単に安くなったんですよね。そんなことも含め、意外とコストが安くすむっていう意味でも大きなチャンス。それから不景気になると、お客さんもノリで買ったりせず選んでくれる。ならば、選ばれる1社になるためにしっかりしたことをやってアピールすればいい。そうすれば、ライバルも勝手に消えていってくれますし」
逆に、日本に見切りをつけて海外に出て行く人たちに対しての考え方も独特だ。そして、その状況すらも成功に結びつけようという発想がある。
「知り合いの社長さんたちも、みんな海外に出て行っちゃってるんです。ということは、国内に優秀な人が減っている。だから日本でちょっとチャンスをつかんだら、簡単にうまくいく土台はそろってるんです。逆にチャンスといわれる東南アジアなどには競合も多い。そういう意味でも、日本はいまチャンスなんです」
(終わり)
印南敦史(いんなみ・あつし)
1962年東京生まれ。ライター、編集者、コピーライター。人間性を引き出すことに主眼を置いたインタビューを得意分野とし、週刊文春、日刊現代、STORYなどさまざまな媒体において、これまでに500件におよぶインタビュー実積を持つ。また書評家でもあり、「ライフハッカー」への寄稿は高い評価を得ている。
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