刃物を手にして「元カノ」の家に忍び込むワケ――あるストーカーの告白:窪田順生の時事日想(2/4 ページ)
三鷹市の女子高生・鈴木沙彩さんが、かつて交際していた無職・池永チャールストーマスに殺された。「警察は適切な対応だったのか」が論点になっているが、筆者の窪田氏は問題の根っこは違うところにあるという。それは……。
「後手」になる理由
事件が報じられると警察に批判が集中した。お前らがもっとしっかりやっていれば――。だが、勾留中の犯人からもらった手紙にはこんな一文があった。
私は警官が警戒につく前(警官がまだいない時)にもう警官からまったく見えない家の裏側にいて、あの時は警官がいないものと思っていたし、張っていようがいまいが全く侵入するのに関係ない状況でした。
実はこれも池永の事件とよく似ている。三鷹署は、つきまといをやめるよう池永に電話をしているのだが、実はその番号は池永の友人のもので、そのころすでに池永は沙彩さんのクローゼットに身を潜めていた。彼女が三鷹署に相談していたことすら知らなかったのである。
つまり、警察は完全に彼らの「後手」にまわってしまっているのだ。
「税金で食っているんだからパトカーの中なんかにいないで24時間態勢で家の周りをグルグル回れ」なんて意見もあるかもしれないが、「桶川ストーカー事件」然り、批判を受けて警察がシャキッと襟を正すのはほんのわずかで、しばらくすると再び「後手」にまわって、犠牲者が出るということが繰り返される。
なぜいつも「後手」になるのか。理由は2つあると思っている。ひとつは寄せられる数が膨大だということ。
昨年、全国のストーカー被害相談は1万9920件。これだけの数が舞込めば、どうしてもマニュアル的に対応に終始する。ひとつひとつの相談に対し、24時間態勢の警備ができるわけがない。
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