刃物を手にして「元カノ」の家に忍び込むワケ――あるストーカーの告白:窪田順生の時事日想(3/4 ページ)
三鷹市の女子高生・鈴木沙彩さんが、かつて交際していた無職・池永チャールストーマスに殺された。「警察は適切な対応だったのか」が論点になっているが、筆者の窪田氏は問題の根っこは違うところにあるという。それは……。
「ストーカー事件」と「交際相手との痴情のもつれ」
そしてもうひとつの理由が、「事件性」の見極めが遅いということだ。
1万9920件のうち、「加害者」というのは「被害者の交際相手」(元交際相手を含む)が1万人以上。つまり、「元カレ」や「元カノ」なのだ。
「昔付き合った彼氏に復縁を迫られています」
「私から別れようと切り出したのに、納得がいかないとしつこくて……」
そんな「痴情のもつれ話」が年間1万件。もちろん、今回のような悲劇に発展にする深刻なものも多いが、なかにはしょうもない痴話ケンカのような話も少なくない。これは本当に危ないのか、危なくないのか。双方の主張を聞いて、調書を作成して上役へ報告……なんてやっているうちに、精神的におかしくなった「元カレ」が包丁を手に、家へ忍び込むというわけだ。
じゃあ、見極めを早くしろよ、と言う声が聞こえてきそうだが、「桶川ストーカー事件」の時代からあれだけ口酸っぱく言っても、窓口の愛想が良くなったくらい。ここらが「お役所」の限界なのではないだろうか。
個人的には、この手の犯罪をなんでもかんでも「ストーカー」というくくりで考えるから、いつまでたってもおかしなことになっている、と思っている。
アカの他人を変質的に追いかけ回すのと、「元カレ」が交際の恨みで「元カノ」を脅すのは、犯罪の種類として、全く違う。「ストーカー事件」と「交際相手との痴情のもつれ」とクッキリ分けるべきだ。前者は、警察の守備範囲だが、後者は、警察の介入によって余計にこじれることも多い。
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