刃物を手にして「元カノ」の家に忍び込むワケ――あるストーカーの告白:窪田順生の時事日想(4/4 ページ)
三鷹市の女子高生・鈴木沙彩さんが、かつて交際していた無職・池永チャールストーマスに殺された。「警察は適切な対応だったのか」が論点になっているが、筆者の窪田氏は問題の根っこは違うところにあるという。それは……。
「ストーカー殺人」という警察用語
先ほどの女子高生を刺した「元カレ」は手紙でこんなことを訴えた。
事件後に被害者の調書を見ましたが、ものすごくウソが多く、自身が不利な事は言わないばかりか、オレのせいにしてウソをついています。(中略) 事件には、そこにいきつくまでの理由があるのです。
彼のやったことは決して許されることではないが、この言葉には学ぶべきことが多い。
「元カレ」が凶行に走るのには、ちゃんと「理由」がある。そんなもん知るか、女性側は嫌がってるんだからさっさと逮捕しろ、では悲劇は繰り返されるだけだ。事件を未然に防ぐためには、「元カレ」がつきまとう「理由」としっかりと向き合わねばならない。
民事不介入が原則の警察には残念ながらそれができない。となると、離婚専門の弁護士のように、交際トラブルを解決する「代理人」のような人々の育成が必要だろう。
いや、その前にまずは言葉を変えたほうがいい。マスコミは警察用語に引きずられ、なんでもかんでも「ストーカー殺人」にする。こういう報道のもとでは、「ストーカー」は頭のおかしい奴らだから、もっと警察が動きやすいようにしろとか、法律を厳しくしろという、10年前と変わらぬ議論しかなされない。
池永は沙彩さんの自宅にも招かれ、親とも面識がある。状況を考えれば、「元カレによる怨恨殺人」という表現が正しい。
ザックリとした言葉のもとでは、いつまでたってもザックリとした解決策しか生まれない。
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