ダヴとオレオはなぜ“ファンづくり”がうまいのか――2社に共通する巧妙な仕掛け:仕事をしたら“広告のツボ”が見えてきた(中編)(1/6 ページ)
キャンペーンなどをうまく活用して、ファンを増やしている企業がある。それはDoveを扱うユニリーバと、Oreoを扱うナビスコ。なぜこの2つの会社は、自社商品のファンを増やすことができたのか。元『広告批評』編集長の河尻亨一さんに解説してもらった。
仕事をしたら“広告のツボ”が見えてきた:
1990年代の後半、日本ではこんなテレビCMが流行した。CMの最後に「つづきはWebで」という文言。そーいえば、そんな広告あったなあ、と思い出した人も多いだろう。しかし、海外の広告事情に詳しい人は知っていた。「つづきはWebで」という文言は、日本で放送される数年前に海外では当たり前のように流れていたことを。
ということは、いま海外で展開されている広告は、数年後に日本にやって来るかもしれない。どんな広告が、世界で流行しているのだろうか。そこで広告事情に詳しい、元『広告批評』編集長の河尻亨一さんに、現在注目されている広告についてうかがった。聞き手は、Business Media 誠編集部の土肥義則。全3回でお送りする。
→本記事、中編
河尻亨一(かわじり・こういち):
銀河ライター主宰、東北芸工大客員教授、元『広告批評』編集長など。
1974年生まれ、大阪市出身。早稲田大学政治経済学部卒業。雑誌『広告批評』在籍中には、広告を中心にファッションや映画、写真、漫画、Web、デザイン、エコなど多様なカルチャー領域とメディア、社会事象を横断するさまざまな特集企画を手がけた。
現在は雑誌・書籍・Webサイトの編集から、企業の戦略立案およびPRコンテンツの企画・制作まで、「編集」「ジャーナリズム」「広告」の垣根を超えた活動を行う。カンヌ国際クリエイティブフェスは2007年、08年、10年、11年、12年、13年に参加している。
Doveの広告が興味深い
土肥:前回、河尻さんから、いま世界で注目されている広告を紹介していただきました。その広告に共通する点として、(1)双方向のストーリー(2)リアルな体験(3)ソーシャルグッド(社会によい行為)――の3点を挙げられました。中でも特に注目されているのが「ソーシャルグッド」で、これをうまく活用している企業があるそうですね。
河尻:はい。ユニリーバによる「Dove(ダヴ)」の広告は面白いモノが多いのですが、ここではブラジルで公開された作品を紹介しますね(参照リンク)。
事件が起きたとき、目撃証言などから犯人の似顔絵を描く人がいますよね。Doveの広告にはFBI(米連邦捜査局)の似顔絵捜査官が登場して、こんなことを始めました。年齢や経歴が異なる7人の女性が、自分自身の顔を説明するんですよ。何も知らされていない彼女たちは「私の顔は丸いの……」などと話す。その言葉を聞いて、似顔絵捜査官は彼女たちの似顔絵を描いていくんですよ。もちろん、相手の顔は見ずに。
また彼女たちは同じ日に、待合室で見知らぬ人としばらく過ごしました。見知らぬ人たちも何も知らされないまま、その後、似顔絵捜査官の部屋に呼ばれ、先ほど会った女性の顔について説明するように求められます。そして、女性の似顔絵が完成しました。
土肥:つまり、似顔絵捜査官は同じ女性の似顔絵を2枚描いた。1枚は、自分自身で語ったモノ、もう1枚は、初めて出会った人からの証言によるモノ。
河尻:はい。で、どんなことが起きたと思いますか?
土肥:うーん、何だろう?
河尻:同じ女性の2つの似顔絵を並べてみると、その違いが一目瞭然なんですよ。下の写真を見ていただけますか? 左が自分自身で語ったモノ、右が他人の証言によるモノ。
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