鉄道イベント列車が快走する――“おもてなし”の心を乗せて:杉山淳一の時事日想(2/5 ページ)
2013年10月13日と14日、JR西日本で国鉄型急行電車を使った臨時列車「北陸本線100周年記年号」が走った。JR西日本と日本旅行が企画したものだが、ただ走らせるだけではなく、さまざまなイベントを用意して「おもてなし」の心がこもっている。
各駅の「鉄道の日イベント」をつなぐ列車
国鉄時代の塗色の急行型電車が、かつての急行列車同様にスピードを出して運転する。それだけでも鉄道ファンにとって満足度は高い。しかし、JR西日本と日本旅行はさまざまな付加価値を設定した。まずはヘッドマーク。かつて北陸本線を運行した急行「立山」と「くずりゅう」の2つを用意し、金沢駅で交換した。ヘッドマークの架け替えは誰もが撮影したいと殺到するところだ。そのため安全面を考慮して、いったん引き上げ線に移動した上での作業となった。手間がかかるけれど、サービスと安全対策のさじ加減が難しい。
私が乗った列車は14日の復路。糸魚川発敦賀行きだ。糸魚川発10時10分。敦賀着16時48分。6時間半の旅となる。急行の再現にしてはかなり時間がかかっている。これは途中の停車時間が長いからだ。富山駅で約1時間、金沢駅で約40分、加賀温泉駅で約30分、今庄駅で約50分も停まる。臨時列車のため、途中で特急列車や貨物列車に道を譲っての道中となる。そのぶん、駅間ではスピードを上げて、かつての急行の走りを経験させてくれる。こうしたダイヤ設定も鉄道会社の苦心による。
糸魚川駅では出発式典として、ホームで翡翠(ひすい)太鼓の演奏が行われ、俳優の永井大さんによる発車の合図で出発した。永井さんは糸魚川市出身とのことで、この日は糸魚川駅の1日駅長を務めていた。「北陸本線100周年記年号」と糸魚川駅鉄道まつりとのコラボレーションといったところだ。この発車時に、1号車の車内から窓の外へ手を振り、笑顔を振りまく車掌さんがいた。しかし、制服が現在とは違う。この人の正体は、次の停車駅、富山で明らかになった。
富山駅では車内と車外でイベントが同時進行する。ホームでは「富山駅まつり」に参加したゆるキャラの皆さんが記念撮影を実施。「北陸本線100周年記年号」は経由する各駅の鉄道イベントに華を添える役割も持っているようだ。停車時間が1時間もあるため、電車の写真を撮りたい人たちものんびりと、交代で場所を譲っていた。私も隣のホームから列車の全景を撮影した。
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