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インタビュー

日本企業の広告が、世界で評価されない理由仕事をしたら“広告のツボ”が見えてきた(後編)(5/5 ページ)

世界最大級の広告祭「カンヌライオンズ2013」のグランプリ受賞作をみると、ほとんどが欧米企業だった。なぜ日本企業の広告は評価されなかったのか。元『広告批評』編集長の河尻亨一さんに聞いた。

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土肥:日本に比べて、米国は水平的な環境が進んでいるような感じですよね。紙メディアがどんどん衰退していっています。

河尻:企業が新製品の発表会を開いても、記者が来ないというケースが増えているようですね。新聞記者のリストラが進んでいるので、記者1人当たりの仕事量が増えている。その結果、取材する時間が減ってしまった、ということを耳にします。では、いまはどうなっているのか。企業は解雇された記者を雇っているんですよ。そしてその元記者が、企業の情報を発信している。

 英国でネットの広告費がテレビを上回った、というニュースが出てから5年が経ちました。日本のようにテレビ局がたくさんないということもあるのでしょうが、欧米は変化が早い。あくまでイメージですが、日本は「温暖湿潤気候」だなあと感じています。

土肥:温暖湿潤気候? どういう意味でしょうか?

河尻:情報環境という森の中に、いろんなメディアやプラットフォーム、サービスが混在しているというか……。強い木がすべての栄養を奪い取るのではなく、そこそこ大きい木があるのに、湿気があってキノコやコケも生長しやすい。なんとなく“ごっちゃ”になっているので、そこに発生する“文脈”が複雑になるんですよ。逆に言うと、そこが日本のいいところでもあるのですが、海外から見ると分かりにくい。

土肥:なるほど。冒頭、河尻さんが指摘されたように、欧米と日本との文化の違いに行き着くわけですね。ソーシャルグッドの展開がなかなかできないのは企業だけに責任があるのではなく、文化、メディア環境の違いがある。もちろん私たち国民も、それを強く望んでいないのかもしれません。

河尻:欧米企業が良くて、日本企業が悪い――といった話ではありません。あくまで、“違いがある”と認識したほうがいいでしょうね。

(終わり)

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