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インタビュー

日本企業の広告が、世界で評価されない理由仕事をしたら“広告のツボ”が見えてきた(後編)(4/5 ページ)

世界最大級の広告祭「カンヌライオンズ2013」のグランプリ受賞作をみると、ほとんどが欧米企業だった。なぜ日本企業の広告は評価されなかったのか。元『広告批評』編集長の河尻亨一さんに聞いた。

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いま起こっていることの正体

河尻:下の図は「いま起こっていることの正体は何なのか?」を私なりに簡略化したものです。従来のメディアと新しくできたコミュニティというのは、性質がずいぶん違います。メディアは垂直的に情報を提供していきます。限られた人たちが情報を提供して、それ以外の人たちが情報を受け取る。その流れは、一方通行ですよね。

 テレビ、新聞、雑誌といったメディアがある中に、コミュニティ型のメディアができてきました。SNSはメッセージ自体が大事ではなくて、人とつながることが優先される。人気作家やコピーライターなどは言葉の使い手としてはスゴいはずなのに、必ずしもTwitterで人気者になれるとは限りません。これは既存メディアのように垂直的に情報が流れるのではなく、水平的に流れていく。情報はストックされませんが、関係がストックされます。

土肥:今後も情報の流れは変化していくのでしょうか? 垂直的から水平的に。

河尻:どちらにも長所短所があると思うんですよ。基本的には垂直的から水平的に流れていくと思うのですが、コミュニティの中にしかいないと、視野は狭くなります。自分がほしい情報しか持っていない……そんな状況ですよね。そこへの依存が進むと、ほかのコミュニティやグループの価値観が理解できなくなったりもするでしょう。

 一方、テレビのように情報がどんどん流れてくると、自分に興味がないことも入ってきます。そうなると、多くのことに興味を持つようになりますよね。あれなに? といった感じで、新たな気づきも生まれやすい。ただ現状では双方向性が低いですし、マスを対象としているので、誰もが理解できそうな平均的な情報がメインになる。そのため「物足りないなあ」と感じる人が増えていくでしょう。

 この両者をうまく合体することができればいいのですが、性質がかなり違うので難しい。しかし広告というのは、その役割を果たすことができると思っています。なぜなら企業活動や社会、人々を結びつける潤滑油的存在だからです。

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