日本企業の広告が、世界で評価されない理由:仕事をしたら“広告のツボ”が見えてきた(後編)(3/5 ページ)
世界最大級の広告祭「カンヌライオンズ2013」のグランプリ受賞作をみると、ほとんどが欧米企業だった。なぜ日本企業の広告は評価されなかったのか。元『広告批評』編集長の河尻亨一さんに聞いた。
コミュニティと付き合う
河尻:「ゆるい化」というキーワードを踏まえて、いま世界的に起こりつつあることを説明しますね。ある本に、こういうフレーズがありました。
広告は19世紀にはたんなる(1)製品の宣伝であり、20世紀になると(2)欲望を喚起するための産業広告となったが、これは21世紀には(3)純粋なコミュニケーションとなるだろう。(『情報化爆弾』ポール・ヴィリリオ)
※(1)〜(3)は河尻氏が加筆。
19世紀はマスメディアがいまのように発達していなかったので情報が少ない。商品も少なかったので、それがどういったモノなのかを説明するだけで売れたんですよ。例えば「クルマが発売されました」と言うと「なんだそれ、スゲー!」といった感じで。これが「(1)宣伝」になります。
ところが20世紀になると、大量生産が本格化して、技術も成熟化しました。競合商品が増えていく中では、差別化戦略がカギを握る。そこでテレビや新聞などで「このクルマはこんなにカッコイイ!」などとイメージ訴求しなければいけません。それを解決するのが広告のクリエイティブだったわけです。
土肥:バブル経済が弾けるころまでは、そんな感じでしたよね。
河尻:景気が右肩上がりのときは、それで良かったんですよ。クルマはすでに持っているけど、カッコイイクルマを見せられると、またほしくなるといった感じで。これが「(2)欲望を喚起する」ですね。もちろんいまでも「このクルマはこんなにカッコイイ」という手法は有効なのですが、徐々に前ほど効かなくなってきました。その要因のひとつが、インターネットの登場ですね。
そのクルマがすごくカッコイイのは分かった。でも、性能はどうなの? といった疑問を、多くの人がネットで調べるようになりました。そこそこいいモノかもしれないけど、同じようなモノがもっと安くて売っているので、そちらを買う。そんな人が増えてきました。
そこにSNSが登場してくると、広告で薦められているモノよりも、自分の友達が薦めているモノを買う人が増えてきました。これは「(3)純粋なコミュニケーション」になるのですが、このような状況の中で企業はどうすればいいのか。前回も紹介しましたが、やはりコミュニティをつくるか、あるいはコミュニティの中に入っていくしかないんですね。
土肥:なるほど。
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