作家のエージェントって何? 『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』の編集者に聞く:これからの働き方、新時代のリーダー(前編)(1/6 ページ)
漫画『ドラゴン桜』などヒット作を手掛けてきた編集者がいる。その名は、佐渡島庸平さん。昨年まで講談社で働いていたが、エージェント集団「コルク」を立ち上げた。聞き慣れない「作家のエージェント」とはどんな仕事なのか。本人に直撃した。
佐渡島庸平――。彼の名前が一般の人に注目され始めたのは、1年ほど前からだ。2012年10月、講談社を辞めて、エージェント集団「コルク」を設立。彼は『モーニング』の編集者として、たくさんのヒット作を世に送り出してきた。『バガボンド』『ドラゴン桜』『働きマン』『宇宙兄弟』といった漫画だけではなく、小説にも関わってきた。いわば“ヒット作請負人”として活躍してきたが、なぜ講談社を飛び出し、エージェントの道を選んだのだろうか。
「エージェント」を直訳すると「交渉人」とか「代理人」という意味だが、中には「“中抜き業者”のことでしょ」と思っている人も多いだろう。わざわざ誤解を招きそうな言葉を使っているが、佐渡島さんは「編集者を辞めたわけではありません。作家側の人間になるために『エージェント』という立場にこだわりました」という。これはどういう意味なのか? 編集プロダクションやフリーの編集者とは何が違うのか? Business Media 誠編集部の土肥義則が聞いてきた。全3回でお送りする。
プロフィール:
佐渡島庸平
1979年生まれ。中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、灘高校に進学。2002年に東京大学文学部を卒業後、講談社に入社し、モーニング編集部で井上雄彦『バガボンド』、安野モヨコ『さくらん』のサブ担当を務める。2003年に立ち上げた三田紀房『ドラゴン桜』は600万部のセールスを記録。小山宙哉『宇宙兄弟』も累計1000万部超のメガヒットに育て上げた。伊坂幸太郎『モダンタイムス』、平野啓一郎『空白を満たしなさい』など小説連載も担当。2012年10月、講談社を退社し、作家エージェント会社、コルクを創業。
起業して、1年が経過
土肥:コルクを立ち上げられて、1年が経ちました。これまでどんな仕事をされてきたのか? といった話をうかがいたいのですが、その前に「作家のエージェントって何?」と思っている人が多いと思うんですよ。既存の出版社、編プロ/フリー編集者と違って、どのような立場なのでしょうか?
佐渡島:下の図を見ていただけますか。これは既存の出版社のシステムですね。
土肥:これは理解できます。編集者は作家から原稿をもらって、それを編集する。そして作家は、出版社から原稿料などをいただく。
佐渡島:次に、編プロ/フリー編集者のシステムを見ていただけますか。
土肥:編プロ/フリー編集者の立ち位置が、微妙ですね。出版社側に半分ほどかかっている。
佐渡島:「フリーの編集者のほうが社員の編集者より自由」と思うかもしれませんが、決してはそうではありません。実際は、出版社側の人間なんですよね。例えば、出版社に「この企画はどうでしょう?」とおうかがいをたてなければいけません。また出版社側から編集協力費をいただいているので、出版社の意向で働く外部スタッフという状態です。
土肥:なるほど。
関連記事
- なぜ男性ファッション誌『smart』は売れているのか
男性向けの雑誌が苦戦している。しかし逆風が吹き荒れる中でも、売れている雑誌がある。それが男性ファッション誌の『smart』だ。販売部数を伸ばしている理由、そして若い男性の心をつかむ秘けつなどを、太田智之編集長に聞いた。 - 朝日新聞が、世間の感覚とズレにズレている理由
気鋭のジャーナリスト、上杉隆氏、相場英雄氏、窪田順生氏の3人が、Business Media 誠に登場。「政治評論家に多額の資金が渡った」と指摘されている官房機密費問題や、メディアが抱える問題点などについて語り合った。 - NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由
言葉を生業にしているマスコミだが、会社によってビミョーに違いがあることをご存じだろうか。その「裏」には、「華道」や「茶道」と同じく「報道」ならではの作法があるという。 - 何が問題なのか? メディアにころがる常識
メディアが構造的な問題に苦しんでいる――。購読部数の減少、広告収入の低下などさまざまな課題が押し寄せているが、解決の糸口が見えてこない。こうした問題について、ジャーナリストの津田大介氏と社会学者の鈴木謙介氏が語り合った。 - 紙メディア特集・バックナンバー:
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.