作家のエージェントって何? 『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』の編集者に聞く:これからの働き方、新時代のリーダー(前編)(3/6 ページ)
漫画『ドラゴン桜』などヒット作を手掛けてきた編集者がいる。その名は、佐渡島庸平さん。昨年まで講談社で働いていたが、エージェント集団「コルク」を立ち上げた。聞き慣れない「作家のエージェント」とはどんな仕事なのか。本人に直撃した。
“縦割り行政”の弊害
土肥:それは既存の出版社ではできないことなのでしょうか。香港でアニメ化なんて、おいしい話ですよね。
佐渡島:出版社は、作家からすべての権利を預かっています。ただ大手出版社は、たくさんの作品を抱えているので、すべてに対応するのが人員的に難しいんですよね。本があって、それが大ヒットしてから、多展開する。一方、私たちは連載が始まったとき、または本が出たときに多展開するようにしました。
あと、これまでは多展開するのに、ものすごくお金がかかっていました。特に映像は。でもネット上でプロモーションができるようになってからは、それほどお金をかけなくてもできるようになりました。なので私たちのような小規模の会社でも多展開ができるようになったんですよね。
土肥:プロモーション費用が安くなったから、いろいろなことができるようになった。でもそれって、既存の出版社でも同じ条件ですよね。なぜやらないのでしょうか。
佐渡島:大手出版社は組織が硬直しているからです。部署が違うと、なかなか思い切ったことができないんですよね。編集者というのは原稿を編集して、雑誌を出す、本を出す――これが主な仕事。それ以外のことは、別部署に任せるんですよ。いわゆる“縦割り行政”の弊害が出ているのではないでしょうか。
土肥:お役所みたいですね(笑)。
佐渡島:出版社は分業制が進んでいます。本をつくる人、本を売る人、本を電子化する人、ライツを管理する人といった感じで。そして最大の弊害は、責任を持つ人が分かりにくくなるということ。
土肥:どういうことでしょうか?
佐渡島:作家は作品に1人で責任を持っていますよね。でも出版社側の責任は、バラバラ。
土肥:ということは作品ごとに分業したほうがいいと?
佐渡島:ですね。分業のあり方を変えれば、いまの出版社はものすごく変わるのではないでしょうか。出版社にいたときに、それができたかもしれない。でも私は経営者ではないので、それはできませんでした。そうしたジレンマが解消できないので、会社を立ち上げたんですよね。
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