特定秘密保護法は“平成の治安維持法”で軍事国家へまっしぐら……本当に?:窪田順生の時事日想(1/3 ページ)
安倍政権が「特定秘密保護法」を成立させようとしている。政府の動きを受け、いろんな人たちが反対のシュプレヒコールをあげているが、「それって逆効果でしょ」と思うのもある。単に恐怖をあおるだけでなく、やるべきことは……。
窪田順生氏のプロフィール:
1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
自衛隊のイラク派遣が行われるか否かというころ、ちょいとしたルートから、陸上自衛隊の内部資料をこっそりと頂戴したことがある。
富士演習所で秘密裏に行われていたイラクを想定した軍事訓練、その訓練用施設を撮影した写真やら訓練マニュアルやら一式だった。もらっておいて言うのもなんだが、取り扱いにかなり困った記憶がある。
紙面でバーンと見せられるようなものでもない。軍事関係者が見れば、イラクに派遣される自衛隊がどの程度のレベルで、なにを想定しているのかはぼんやりでも分かる。つまり、もしこれがテロリストの手に渡れば、自衛隊をいたずらに危険にさらすことになりかねないからだ。
イラク派遣で日本は戦争へ突入だ、とか騒いでいらっしゃる媒体に持ち込んだら、それはそれでおかしなことに使われる。もちろん、ネットで公開なんてとんでもない。結局いろいろ思い悩んだ末、“ボツネタ”のファイルにしまいこんだ。
フリーランスで細々と取材する者ですらこの程度なのだから、永田町でハイヤーを乗り回す、一流報道機関の記者ともなれば、国家の安全保障にかかわるような「秘密」がバンバン持ち込まれる。
日本版NSCなんて立ち上げて、同盟国と情報共有しようというのに、これはさすがにマズいんじゃないのということで、今国会に通そうとしているのが「特定秘密保護法」である。国家の安全にかかわる「特定秘密」をもらした公務員は最大で懲役10年。これならばそうおいそれとはリークもできまい、というわけだ。
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