特定秘密保護法は“平成の治安維持法”で軍事国家へまっしぐら……本当に?:窪田順生の時事日想(2/3 ページ)
安倍政権が「特定秘密保護法」を成立させようとしている。政府の動きを受け、いろんな人たちが反対のシュプレヒコールをあげているが、「それって逆効果でしょ」と思うのもある。単に恐怖をあおるだけでなく、やるべきことは……。
恐怖をあおる反対スタイル
この政府の動きを受け、いろんな方たちが反対のシュプレヒコールをあげている。「知る権利」を守るため、ぜひ頑張っていただきたいなと思う一方で、「これって逆効果じゃないの」と心配をしてしまうような主張もある。例えば、以下のようなものだ。
「平成の治安維持法だ。自民党が国民に内緒で自衛隊を派遣できるようにしている」
「自衛隊が情報漏洩者を捜索して逮捕することも考えられる、憲兵隊の復活だ」
「福島第一原発の被ばく状況も秘密扱いにされて隠蔽(いんぺい)される」
いや、なにもこのような訴えがくだらないとか言っているわけではない。この手の「恐怖をあおる反対スタイル」ばかりが取り沙汰されると、「怖い」「怖くない」という感性の闘いとなり、どこまでいっても平行線というか、建設的な議論にならないのではないかという気がしているのだ。
例えば、「住基ネット」だ。正式名称、「住民基本台帳ネットワークシステム」。引っ越しても手続きがラクだとか、住民票の写しがすぐにとれるというふれこみで、2002年に400億円をかけて導入されたものである。
覚えている方も多いと思いが、この住基ネットに寄せられた批判といえば、プライバシーとセキュリティーの問題である。マスコミが「国民総背番号制」という言葉を連日のように報じ、当時、圧倒的に影響力を誇ったニュースキャスターも、「人間に番号を割り振るなんて、我々はロボットではない!」とあおりまくって、新聞も「国家による国民の監視だ」と憂いてみせた。
結果、自治体の導入成果はわずか5%。「血税をドブに捨てる」のお手本として今も語り草になっているが、これはプライバシーやセキュリティーの問題というよりも、日本社会にどうしても必要なシステムではなかった、ということに尽きる。つまり、SF映画のような話や、人間の尊厳うんたらかんたらではなく、もっとシンプルに「そんなもん、本当に必要なの?」という議論がなされなければいけなかった案件である。
そういう必要なプロセスをちゃんと踏まなかったので、問題の本質がうやむやとされる。だから、ほとぼりが冷めたら似たような話が蒸し返される。「電子政府」というカッコいい響きとともに、「マイナンバー制」なんて今風に言葉を変えて。
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