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特定秘密保護法は“平成の治安維持法”で軍事国家へまっしぐら……本当に?:窪田順生の時事日想(3/3 ページ)
安倍政権が「特定秘密保護法」を成立させようとしている。政府の動きを受け、いろんな人たちが反対のシュプレヒコールをあげているが、「それって逆効果でしょ」と思うのもある。単に恐怖をあおるだけでなく、やるべきことは……。
感情的な反対
しかも、今度は400億円どころか2700億円もかけるという。バカも休み休み言えという話だが、なぜ10年前の手垢(てあか)のついた詐欺話がよみがえったのかといえば、ひとえに本質的な議論ではなく、「我々はロボットではない!」という感情的な反対しかなされなかったからだ。
感情はより強い感情に押し流される。「今はみんな携帯やスマホもってるじゃん。米国の社会保障番号みたいでオシャレでいいんじゃない?」みたいな大多数の国民感情を前に、「国家の監視だ」「ロボットにされる!」といくら叫んでも、その声は虚しく響くだけだ。
日本の官庁の情報管理があまりにずさんで「スパイ天国」なのは紛れもない事実だ。公務員から機密を聞き出そうというのは記者ばかりではない。結婚や恋愛の自由はもちろん保障されなければいけないが、中国人女性たちと交際、あるいは結婚している自衛官が多い現状をどう考えるのか。
まず、この国には本当に秘密保護が必要なのかという議論がきっちりとなされなくてはいけない。スパイがいても、機密が漏れようとも「イマジン」でも歌っていれば日本人はハッピーだ、というのならそれはそれでいい。逆に必要だというのなら、情報公開法改正と、公文書管理改正と三位一体で進めるという落としどころをつくって、「知る権利」とのバランスをとるべきではないか。
軍靴の音が聞こえる、と恐怖をあおるだけでは社会は何も変わらない。
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