過疎の町に、企業が次々に集結するワケ:自然豊かなエリアに(2/5 ページ)
高度経済成長期以降、地方から都市部への一極集中傾向が進んだ結果、現在地方では過疎化などの問題が顕在化している。この問題を解決するために、とある街では地域活性化の動きが加速。IT企業やクリエイティブ企業が次々に集結しているのだ。
クリエイティビティを発揮するのに最高の環境
そんな地域に2012年に突如IT企業のサテライトオフィスが開設された。開設したのは著作権保護や機密情報の漏洩対策などセキュリティ製品を手掛けるサイファー・テック。同社代表の吉田基晴氏は元々美波町の出身だったが、大学進学をきっかけに郷里を離れ、2003年にサイファー・テックを創業して東京を拠点に事業展開してきた。そんなある日徳島県が企業誘致事業として「とくしまサテライトオフィスプロジェクト」を進めていることを知り、生まれ故郷にサテライトオフィスを開設するに至った。
「私たちが提供するセキュリティ事業は、クライアント企業の課題を解決するビジネスです。そして課題解決に向けて最も必要なことは、顧客が何を考えていて、何を求めているのかを想像して、そしてそれを上回るものを提供する、つまり“クリエイティビティ”です。」(吉田氏)
「一方で、ただ口で『価値創造を!』とか『クリエイティビティを養え!』などと言ったところで、そうそうたやすくクリエイティビティを身につけることはできません。人間はどのように働き、どのように暮らすか、つまり自分の生き方を自らデザインする時に最もクリエイティビティを発揮すると思います。そこで生活と業務をどう両立するかを考える環境として、自然に囲まれた美波町にサテライトオフィスを設けることにしました。」(同)
それを端的に表現したのが、同社が提唱する「半×半IT」というワークライフバランスの考え方だ。“×”には社員一人ひとりの趣味を充て、サーフィンを趣味とする社員は「半波半IT」、狩猟を趣味とする社員は「半猟半IT」など、個人の趣味と業務の両立を試みる。
ちなみにサーフィンを趣味とするのは住吉二郎氏。元々住吉氏は埼玉県出身で、東京のIT企業に勤務していたが、サーフィンと仕事を両立できる環境を求めていた時に同社のサテライトオフィス開設のニュースを聞きつけて応募した。
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