過疎の町に、企業が次々に集結するワケ:自然豊かなエリアに(5/5 ページ)
高度経済成長期以降、地方から都市部への一極集中傾向が進んだ結果、現在地方では過疎化などの問題が顕在化している。この問題を解決するために、とある街では地域活性化の動きが加速。IT企業やクリエイティブ企業が次々に集結しているのだ。
兵頭デザインは、フォントデザインやロゴデザインを主要分野としたデザイン会社で、大手メーカーのフォントデザインやロゴデザインを手掛けてきた。その一環としてサイファー・テックの「美波Lab(みなみらぼ)」のロゴデザイン制作を通じて美波町と関わることにより、次第に美波町進出の想いを強め、最終的にサテライトオフィスと新会社を2013年夏に設立するに至った。
デザイン業務は、デザイナー一人ひとりの感性が重要な経営資源と言えるが、「大自然に囲まれた美波町は、デザイナーの感性を刺激し、そして一人ひとりの力を最大限に発揮するのに最適な環境」(兵頭デザイン取締役兵頭将勝氏)と判断してサテライトオフィスを開設。その一方、典型的な過疎地域である美波町の実情を目の当たりにし、「今まで培ったブランディングのノウハウを活用しながら、地域課題の解決に向けて現況に適応した地域づくりに挑戦したい」(同)という想いが湧き上がり、サテライトオフィスとは別に、地域ブランディング事業を手掛ける新会社「Studio23」を立ち上げた。
また兵頭氏は、美波町や周辺地域の若年層に対してインターンやセミナー・ワークショップなどを開催し、地方にいながらにしてクリエイティブ分野に触れる機会を創りだすなど、次世代のクリエイティブ人材の育成にも取り組んでいきたいという。
さらにITや写真を活用して地域の課題解決や魅力発信のためのコンテンツ企画・制作を展開する企業が設立されるなど、首都圏の経営者たちが地域活性化に向けて英知を結集すべく次々に美波町で起業する動きが出てきており、今後各社は連携しながら地域活性化に取り組んでいくとしている。
人口流出や産業衰退、高齢化・過疎化など地方の問題が叫ばれて久しい。しかしこうした課題先進地域である地方に英知を結集して課題解決を図ることにより、ひいては日本全体の再生につながるとともに、さらには同様の問題が顕在化してくる世界各国に対して発信できる先進事例となるうる可能性を秘めていると言えよう。そんな期待を込めながら、今後も同町の取り組みに注目していきたい。(小槻博文)
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