「面白いなあ」と思うCMが、なぜ減っているのか:仕事をしたら“面白い広告”ができた(3/5 ページ)
その昔、会社や学校で「○○のCMって、面白いなあ」という会話があったが、最近はめっきり減ってしまった。その理由について、これまで数多くのCMを手掛けてきた、電通CDCの高崎卓馬さんに聞いた。
幼稚な作品が増えている
高崎: 例えば「20%増量」を強調するために、「20%増量」をただ面白く伝えようとする。こうした表現って幼稚だと思うんですよ。表現はもう少しいいことができると思うんですよ。
土肥: うーん、ごめんなさい。もう少し分かりやすく説明していただけますか。
高崎: この広告が世の中に存在する理由は何だろう? 人を笑わせるためだ、と決めたのであれば、とことんその部分にこだわらなければいけません。でもそうした覚悟もなく、なんとなくこれをやれば面白いかな、といった表現が増えてきているのではないでしょうか。それは先ほども申し上げましたが、道でころんだら誰もが笑う、という安易なオチで済ませてしまっているのかもしれません。
土肥: 幼稚な作品が増えている原因は、どこにあるのでしょうか。
高崎: 一番の原因は、クライアントが「自分たちが思っていることをそのまま言ってほしい」という傾向が強くなっているから。「『20%増量』を何度も何度も言ってほしい。できるだけ強く言ってほしい」といった感じで。
でも広告というのは、とんでもない“鉱脈”を掘り当てることがあるんですよね。なんでもなかったモノが大ヒットしたり、世の中が震えるくらい流行したり。そうしたモノは広告によって、生み出すことができると思うんです。鉱脈を掘り当てることができるのに、それに期待せず、商品のポイントだけを伝えてくれればそれでいい、という傾向が強くなっているのかもしれません。
土肥: 東進ハイスクールのCMは、まさに鉱脈を掘り当てたわけですよね。林修先生の「いつやるの? 今でしょ」は、流行語になりましたし。
ただ、全体的にテレビCMが話題になることが減ってきていると思うんですよね。それはメディアの力が弱くなってきているからでしょうか。
高崎: メディアの力が弱くなっているというよりも、タイムライン化が進んでいるのではないでしょうか。
土肥: タイムライン化?
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