あの半沢直樹や安倍首相も……日本社会を埋め尽くす“カエル男”ってナニ?:窪田順生の時事日想(3/4 ページ)
「カエル男」という言葉をご存じだろうか。一言で言えば「奥さんにカネも決定権も支配され、経済的にも搾取されている男」のこと。そのカエル男が今、さまざまな問題を引き起こしているのではないだろうか。
半沢直樹の内面
ドラマをご覧になっていた方は分かると思うが、半沢は専業主婦と子どもを養うエリート銀行員。しかも妻・花には頭があがらないという設定で、典型的なカエル男。さらに、「倍返し」をモットーとしており、自分に不条理なことをした上司や常務に対し、地獄の果てまで追いつめて土下座を強要する。「ドラマなんで」と言ってしまえばそれまでだが、日常が不条理だらけのサラリーマンからすれば、理解に苦しむパーソナリティだ。なぜ半沢直樹というカエル男はここまで激しい攻撃性があるのか。
その謎を解くカギが、不良債権の責任を押しつけた浅野支店長に、不正を追及する匿名メールを送るというくだりにある。ここで半沢は差出人を妻の名前である「花」にしている。脅迫メールになぜ愛妻の名を使うのか、不思議でしょうがなかったが、原作本を読んで納得した。
半沢は差出人の名前をどうしようかと考えたとき、ふと妻の名前が浮かんで、思わずほくそ笑んでしまった。普段いいたいことをいって、白黒はっきりつけないと気が済まない性格。事件が進展していくと、半沢に対して同情というより叱咤してきた妻に、一矢報いるチャンスだったようにも思える。まさに、支店長の浅野を糾弾するのにこれ以上の名前はないではないか。(『オレたちバブル入行組』文春文庫、244ページ)
半沢の内面には、常日頃から妻に虐げられている怒りがマグマのように煮えたぎっている。その抑圧された怒りが、「やられたら倍返し」という“過剰防衛”につながっているのではないか、と深尾さんは考察する。
「半沢直樹」はサラリーマンのファンタジーなので、怒りは「クソ上司」に向けられたが、現実社会の半沢たちは、そんな真似をしたら即クビである。そこで、怒りのはけ口は、もっぱら「自分よりも立場の弱い者」へ向けられることになる。
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