海外人事の英語が分かればグローバル化は怖くない:ビジネス英語の歩き方(2/3 ページ)
外資系企業の人事は「冷酷だ」と言われることが多い。ですが、採用面を見てみると非常に合理的なシステムが構築されていることが分かります。
「仮採用期間」はやるべきことがいっぱい
一般的に海外の企業では、会社全体への帰属意識よりも、部門あるいは部署への帰属意識が強くなります。長く同じ会社に在籍すれば、人間の自然な感情として会社そのものへの帰属意識も高くなっていくのが普通ですが、3〜5年で転職する人が多い海外では、日本のように20代のうちは育成期間などとのんびりしていることはありません。採用が決まってからも日本とはだいぶ違って、さまざまな関門があります。
そもそも採用が決まっても、必ずプロベイション(Probation)という期間が設けられます。この場合は仮採用期間。会社側が「この人はこの仕事に向かない」という判断をしたら、その期間終了と同時に採用の話はなかったことになります。
「やっぱり外資は冷たいな」と思う人もいるでしょうが、むやみに仮採用期間があるわけではありません。この期間、会社側には採用した人に改善すべき点を指摘し、かつ改善できるようにサポートすることが義務付けられています。何も指摘することなく仮採用期間が終わると同時にクビということはしません。プロベイションは3〜6カ月で、その期間は本人に明確に告げられます。
あなたは「プロベイションですよ」と言われたら、どうする?
もう少し、プロベイションについて触れていきましょう。辞書でこの単語を引くと「保釈」とか「保護観察(期間)」「執行猶予」とあり、少しショックを受ける人もいるかもしれません。立場上、一点の曇りもない安定した身分ではないということをプロベイションというのです。
例えば、解雇に関する予告をするときにも、この単語が使われます。
You are on probation.
と言われたら、「あなたは解雇される危険がありますよ」ということです。直訳すれば「あなたは行動観察の対象になります」ということで、さあ大変です。「どうしよう、次の仕事を探さなきゃ」となるのは普通ですが、米国ではこう聞き返す必要があります。
What should I improve with?
このやり取りのミソは、「あなたは解雇されるかもしれませんよ」と警告されたら「どこを直せばいいんですか?」と聞き返すところにあります。すると上司は、明確に対象者のダメなところ、問題点を指摘しなければなりません。
「You are on probation.」は最後通牒(さいごつうちょう)ではないのです。「あなたの仕事ぶりに、(上司として)私は不満があります」ということであって、「あなたが何を言ってもダメです。クビはクビです」ということではないのです。
部下の指導ができない、顧客から不満が聞こえてくる、勤務態度がよくないという声が同僚から届いている、成績が上がっていない……、さまざまな理由が挙げられるかもしれません。
しかし、それを具体的に上司から聞き出して改善すれば、
You are not on probation any more.
と、プロベイションは終わりを告げます。実際にそういうことは大いにあるのです。
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