海外人事の英語が分かればグローバル化は怖くない:ビジネス英語の歩き方(3/3 ページ)
外資系企業の人事は「冷酷だ」と言われることが多い。ですが、採用面を見てみると非常に合理的なシステムが構築されていることが分かります。
海外赴任した日本人上司にまつわるエトセトラ
日本以外では、上司とは雇い主そのもので大変な権力(解雇権など)を持っている存在だと認識する必要があります。逆に日本企業で海外に赴任する場合、人事は人事部門の仕事で、自分には人事について何の権限も義務もないと思っていると、現地スタッフの思いと大きなズレが生じてしまうことになります。
例えば、部下であるインドネシア人のマネジャーから「自分をもう1つ上のポジションに上げてほしい」と相談されたときに、「俺は何の権限もないんだよなあ。ここではバイスプレジデントなんて言ってるけど、本社に帰れば課長だし」などと思っていると大変なことになり得ます。
ある日、そのスタッフは、
I got a new job. My last day here is two weeks from now.(新しい仕事がみつかりました。この会社への最終出社日は2週間後です)
と宣言して去っていくかもしれません。
部下の言い分を「はいはい」と聞いていればよいということではありません。しかし、正面から向き合って「これはできるがそれはできない」と、論理的に相手を説得しなければ部下から見くびられます。部下に厳しい内容であっても言うべきことは言う、やらせるべきものはやらせる、手助けすべきは手助けするという態度が大事なのです。
日本企業的「そのうち異動するし」はNG
外資(中国、東南アジアなども含めて、非日本的企業)においては、目標設定(target-setting)と業績評価(performance appraisal)をきちんとすることが非常に重要です。
日本では、ある部署で上司とそりが合わなくても、いずれどちらかが異動になるだろうから、抵抗もせず、かといって一生懸命仕事をすることもなくという態度で過ごす人がたくさんいます。
これは、日本的人事の中でしか通用しない、非常にロスの多いやり方です。外資では許されませんし、本人にとっても失うものが多い態度です。そんな態度でいる間に、業界のイノベーションはどんどん進み、若手は新しい知識とモチベーションで武装して、先へ先へと動いて行きます。
仕事の目標をしっかり立て、それは実現可能かどうか、期中のチェック(mid-term review)を部下と上司で親身に行い、最終結果を評価し、本人の次年度の目標、仕事の中身、会社(あるいは部門)の業務目的に沿った計画を立てて実行していく。こういうサイクルで回っているのが外資です。
先輩、後輩といった意識は薄く、企業は自分が仕事をする舞台であって、そこに縛られる一生の場所だとはだれも考えていません。「日本企業と外資の違いは人事にある」。このことをはっきりと意識してグローバル時代に向き合う必要があります。
著者プロフィール:河口鴻三(かわぐち・こうぞう)
1947年、山梨県生まれ。一橋大学社会学部卒業、スタンフォード大学コミュニケーション学部修士課程修了。日本と米国で、出版に従事。カリフォルニアとニューヨークに合計12年滞在。講談社アメリカ副社長として『Having Our Say』など240冊の英文書を刊行。2000年に帰国。現在は、外資系経営コンサルティング会社でマーケティング担当プリンシパル。異文化経営学会、日本エッセイストクラブ会員。
主な著書に『和製英語が役に立つ』(文春新書)、『外資で働くためのキャリアアップ英語術』(日本経済新聞社)がある。
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