今、農業に必要なことは? 農家は「考える」ことを止めさせられた:仕事をしたら“農業の今”が見えてきた(4/6 ページ)
「農業」と聞いてどんなことを想像するだろうか。「高齢者が作業をしている。変化がほとんどない」と思うかもしれないが、今、私たちの知らないところで“新しい動き”が出始めているのだ。それは……。
ミツバチが注目されている
土肥: リーマンショック後に、農業をやりたいという人が増えてきたそうですが、やはり「収入」の部分は大きいと思うんですよ。おいしい野菜を作りたいという情熱があっても、収入が少なければモチベーションを維持することは難しいですよね。
西辻: 例えば、1000平米の土地があって、そこでお米を作ると420キロくらいで、収入は10万円ほど。野菜だと30万円ほど。この数字を見る限り、やはり現実は厳しいですね(平均的な数字で、個人差は生じます)。農業の世界でも、他人と同じようなことをやっていてはダメで、やはり考えないといけません。例えば、数年前から「ミツバチ」に注目が集まっています。
土肥: ミツバチ? どういうことでしょうか?
西辻: 「ミツバチ」と聞いたら、ハチミツを想像する人が多いのではないでしょうか。以前はハチミツを作るくらいしか方法はなかったのですが、いまは違う。ハウス栽培の中に、ミツバチを放すんですよ。すると、ハウスの中の花にミツバチが受粉する。ミツバチがおいしいモノとおいしいモノを結合させるので、作物がおいしくなるんですよね。例えば、数年ほど前からイチゴがおいしくなったと感じませんか?
土肥: 確かに。
西辻: イチゴがおいしくなった裏に、ミツバチの存在があるんですよね。というわけで、ミツバチ貸出業者がもうかっているんですよ。
土肥: 収入はどのくらいですか?
西辻: 1000万円を超えている人が多いのではないでしょうか。実際、広島県で養蜂農業家として活躍されている方を講師としてお招きし、弊社が展開する大学校(アグリイノベーション大学校:2014年2月関西・関東で開校予定)で「養蜂」カリキュラムを開講することにしました。予想通り、反響がかなり良いですね。
土肥: おお、それを聞くと「じゃあ、オレもミツバチ貸出業者になろう」とか、養蜂事業を目指す人が増えてくるかもしれませんね。
西辻: いまの時代に「オレは米を作る。米の量で勝負する」というのは、ナンセンスだと思っています。もちろんその需要があればいいのですが、そうでなければ頭を使わなければいけません。例えば、コップが目の前にあったとします。そのコップは水を飲む以外に価値はないのか? いろいろな角度から見て、違う価値を見い出すことが大切だと思っています。
関連記事
- ミドリムシが世界を救う? そんな時代がやって来るかもしれない
「ミドリムシ」と聞いて、どんなことを想像するだろうか。「青虫」「ミトコンドリア」などを思い浮かべる人も多いのでは。ミドリムシを増やして、地球そして人類を救おうとしている会社がある。その名は「ユーグレナ」。社長の出雲充氏に話を聞いた。 - ライトノベルで農業を描いてみたらこうなった――『のうりん』著者インタビュー
現実と離れた題材が取り上げられることが多いライトノベル。そんな中、農業高校を舞台に大胆な筆致で農業に関わる人々を描いたライトノベル『のうりん』が静かに話題となっている。著者の白鳥士郎さんに、作品が生まれた経緯や反響について尋ねた。 - 農業がもうからないのは……マーケティング不足?
多額の補助金の投入が検討されている日本の農業。しかし、ちきりんさんは「農業がもうからない」と決め付けてはいけないと主張。「もっと、マーケティングを行ってみてはどうか?」と提案します。 - 1億2000万人の目を救う? まだ誰もつくっていない新薬の話を聞いてきた
眼科医として一流の腕を持ちながら、米国で製薬ベンチャーを立ち上げた男がいる。現在、まだ誰もつくり出せていない治療薬を開発中だが、新薬はどのようにしてできるのか。アキュセラ社の創業者・窪田良さんに話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.