古ぼけた採用活動をしている企業が“変われない”シンプルな理由。:サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/2 ページ)
採用担当者たちは日々一生懸命仕事をしています。その結果が「どうして人事は使えないヤツを現場に送ってくるのだ」という罵声になってしまうのはなぜなのか? 変化を阻む意外な理由とは……。
社内調整に追われるのは耐えられないと現状維持を選択
ここまで読んで「それはそうだろう。せっかく導入した、でも成果が出ませんでした、だから新しい仕組みにしますなんて、ビジネス社会では甘い話をするなよ、と馬鹿にされる話だ」と怒ってしまう人もいるでしょう。私もそういう風に上司に怒られた話なのかなと思っていると、まったく違っていました。
その上司がいうには「前回、新しい仕組みを導入するだけでも、何人の上司や役員、親会社の責任者に根回しや決裁が必要だったか、あなたも覚えているでしょう? それをまたやるというの?」と。
去年導入した仕組みが思ったほどの成果が出なかった、もう1年トライしてみますという報告は、それこそ前例があるので直属の上長の決裁を得るだけだし、予算も確保してあるので問題ない。けれどもまた新しい仕組みを入れるとなると、うんざりするような手続きを踏む必要がある。それは耐えられないので嫌だ、という反対理由だったのです。
1年運用してみて、その仕組みはダメだった。それが分かっているのに、改善することができない。身動きが取れなくなってしまって、往生しているというケースが、転職や就活の現場でもゴロゴロしているのです。だからというのも変ですが、新しいサービスが出現しても、そういう体質の企業は導入に対して慎重になる、もしくは「ウチは、そういうのは向いていないのです」と見送るケースがほとんどです。
逆に、サービス導入の意思決定が最小限の人数でできて、なおかつ担当者レベルの権限が大きいところは、スムーズかつ、チャレンジングな企業が多い。興味のあるかたは、求人サービスなどのキーワードで検索をして「見慣れない」サービスをチェックしてみるといいでしょう。そこにはなぜか似たような顔ぶれの企業が並んでいます。そう、それらの企業は人が足りないから採用を強化しているという事実もあるのですが、それ以上に「新しいサービスはとりあえず使ってみる」という感覚が強い企業なのです。
企業の採用活動がチャレンジできない理由は?
「それって普通のことじゃないの?」という反応が、聞こえてきそうな気がします。確かに、ビジネスの現場ではゴロゴロ転がっているよくある話の一つでしょう。ただ、採用の現場では「例年通り」という言葉が、皆さんの想像以上に強固に横たわっています。
新卒採用は文字通り、1年に1度の話なのでトライアンドエラーを繰り返すにはスパンが長過ぎます。ですから、リスクを回避するために、いままでと同じような採用をしておけば「まあ、間違いないよ」という判断がされます。中途採用は、毎回ケースバイケースなので、なかなかナレッジが蓄積されずに、結局「良い・悪い」の判断材利用すら揃わないのが、正直なところです。
そこに硬直した組織が加わってしまえば、いまの仕組みがひずんでいる、イマイチ機能していない、費用対効果が薄いと分かっていても、企業の一担当者やサービスを開発している企業だけの力で、なにかを変えるのは難しいといったところでしょうか。
先の“悪いと分かっているのに変えられない”話を別の企業の人事担当部長にしたところ、「分かります、ウチも同じかもしれません」という反応とともに、「たくさんの人が決定に関与して、それぞれに根回しをして決裁をあおがないといけないのは、ある意味で仕方ない部分だと思います。けれども、最近は最終決定を下す人のマネジメントが、より細かくなっていますよね。そこに疲弊する原因があると思うのです」と、それこそ、うんざりした表情で話をしてくれました。
たくさんの人の目を通過して、散々議論して、最終決裁者の手元に届いたときに、全部ひっくり返ってしまう。いままでのプロセスがまったくなかったことになってしまう。マイクロマネジメントの弊害なのでしょう。採用活動に関しては、その面倒を避けたい、もしくは、その手間を乗り越えるために時間を割くほど重要な課題ではないと認識している企業が、少なくないのかもしれません。結果「多少はひずんでいるけれど、まあ、仕方ない」となってしまう。
自社にとって必要な人材を最適な方法でという重要な視点
ここで明記しておきたいのですが、新しい採用の仕組みを導入しているから良いとか、逆に古ぼけた採用方法をいまだにやっているから悪い、という話ではありません。重要なのは、「自社にとって必要な人材を最適な方法で適切なコストで採用しているのか」ということです。この「自社にとって」という言葉はとても重要なのですが、採用の現場では意外にないがしろにされがち。
「そんなことはないだろう」と思っている読者の方は、どうぞ、自分が勤務している企業の採用ページを見てみてください。そこで紹介されている自社と、自分が勤めている職場に乖離はないかどうか、また、求める人物像が、自分たちの同僚、もしくは上司のそれと合致しているのか。一つ一つチェックしてみるといいでしょう。ごく一般的な、それこそありきたりで「フツーな」言葉が並んでいることに驚いてしまう人も少なくないと思います。
採用担当者たちは、日々一生懸命仕事をしています。が、その結果が「どうして人事は使えないヤツを現場に送ってくるのだ」という罵声であることを自覚して、いろいろと取り組んでいます。が、現実は甘くない。そして、現場との乖離はどんどん進んでいく。改善するための方法も奪われ、八方ふさがりになっている採用担当者たちの悲劇は、行き過ぎたマイクロマネジメントによってさらに大きくなっていくのですが、それは次週にということで。
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