セブン&アイが、過去最高益を計上した理由:新連載・数字のオモテとウラを学ぶコラム(2/3 ページ)
セブン&アイ・ホールディングスが、2013年3〜11月第3四半期で過去最高益を計上しました。同社は誰もが知るコンビニやスーパーのチェーン店を抱えていますが、なぜこのタイミングで最高益を実現することができたのでしょうか。決算短信を見ると……。
コンビニ事業の「2重サイクル」を意識しよう
それでは、コンビニエンス事業ではどうしてこんなに利益が増えているのでしょうか? そのことを分析するためには、コンビニのビジネスが「2重サイクル」になっていることを理解する必要があります。
小さなサイクル:コンビニの店舗で生まれるサイクル
「商品を仕入れる→売る」の繰り返し。アイテムは朝刊や焼きたてパンの配送など、数時間で売られる商品から書籍など数カ月陳列できるものまでありますが、全体として非常に短いサイクルが繰り返されています。
大きなサイクル:コンビニの店舗そのものを増減させるサイクル
「出店する→撤退する」の繰り返し。長期的なサイクルであり、半永久的に利益を出せる店舗もあれば、数年程度で撤退を判断せざるを得ないケースも。
ごく単純に言えば、コンビニエンス事業で利益を増やす方法は、これらのサイクルごとに2通り考えられるわけです。
(1)小さなサイクルで利益を増やす=1つ1つの店舗の収益力を高める。
(2)大きなサイクルで利益を増やす=店舗数を増やす。
セブン&アイ・ホールディングスのコンビニ事業は、それぞれのサイクルでどのように利益を増やしているのでしょうか?
まず、大きなサイクルの動向は、店舗数の増減を調べればいいので、分析は非常にシンプルです。セブン-イレブンの店舗数は、2013年11月末時点で1万5992店舗。これは前期末から920店増加している計算になります。単純に割り算をすれば、前期末比で5.75%の増加ということになります。
9カ月間で均等に出店をしているとすれば、利益へのインパクトはこの半分の2.9%程度。新しいお店を出し続けることにより、着実に収益を上げることができているようです。
ちなみに、セブン-イレブンが出店しているのは全国42都道府県。これだけ大きなチェーン店でも、まだ出店していないエリアがあるということですね。
さて、次に小さなサイクルの動向を見てみましょう。小さなサイクルの成否を判断するためによく使われるのが「既存店売上高」という指標です。新聞記事でもよく目にする言葉ですので、ぜひ覚えておきましょう。「既存店」とは「開店してから1年以上たっているお店」という意味です。新規出店の影響を除外して収益の増減を判断するために使われます。
セブン&アイ・ホールディングスの決算短信には、この既存店売上高が「16カ月連続でプラス」になっていると記載がありますから、大きなサイクルだけでなく、小さなサイクルのほうも利益増加に貢献できていることが分かります。
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