セブン&アイが、過去最高益を計上した理由:新連載・数字のオモテとウラを学ぶコラム(3/3 ページ)
セブン&アイ・ホールディングスが、2013年3〜11月第3四半期で過去最高益を計上しました。同社は誰もが知るコンビニやスーパーのチェーン店を抱えていますが、なぜこのタイミングで最高益を実現することができたのでしょうか。決算短信を見ると……。
次はどんなヒット商品が出るのだろう?
小さなサイクルで利益を増加させるために一番効果的なのが「ヒット商品」を作ることです。ライバル店舗であるローソンではロールケーキが大ヒットして、コンビニにスイーツというジャンルの地位向上に貢献しましたが、実はセブン-イレブンでも新ヒット商品が登場しました。それが「コーヒー」(関連記事)。
缶コーヒーなどとは異なり、1杯ずつその場で抽出されるため、鮮度の高い味わいを楽しむことができ、それでいて価格は100円(レギュラーサイズ)。品質と価格の両立に見事成功した「セブンカフェ」は、あっという間に消費者に受け入れられ、なんと2013年には3億杯以上飲まれたとか。
3億杯に1杯あたりの売り上げを掛け算すれば、300億円です。原価率は飲料メーカーの業績資料などから推測すると25%程度ですから、220億円程度の利益インパクトがあったことになります。
セブン-イレブンはフランチャイズ形式をとっているため、220億円がそのままセブン&アイ・ホールディングスにとっての利益に直結するわけではありません。ですが、単純にこの数字をセグメント利益と比較すると、前年同期比(+250億円)にほぼ匹敵していることが分かります。
このセブンカフェが、最高益を実現した一番の立役者と言っても、おそらく間違いないでしょう。
実はこのセブンカフェの投入が成功した影には、ブランド戦略があります。セブン&アイホールディングスでは、2008年ごろからいわゆるプライベートブランド(PB)である「セブンプレミアム」の商品を順次投入しています。また2010年にはその上位ブランドとして「セブンプレミアムゴールド」を投入しました。これらの商品はますます充実してきており、それ自体も利益の増加に貢献しているところですが、何より大きいのは、PBの充実を通じて、セブン-イレブンが、店舗の商品に良い「イメージ」を植えつけたことだと思っています。
セブン-イレブンならではのブランドを持つことは、新商品投入の際の「勝算」を高めていきます。「安くて確かな品質のセブンプレミアム」「ちょっとぜいたくなセブンゴールド」「セブンが出す新商品は、良いモノに違いない」……。
セブンカフェが発売になった時点で、すでに消費者は上記のような想像をしてしまうようになっていたのです。セブン&アイのロゴのついたコーヒーカップが違和感なく受け入れられ、年間で3億杯もの売り上げを果たしたのは、そういった背景があるからだと分析しています。
ともあれ、小さなサイクルで成功を収める秘けつが「ヒット商品」を生むことだということは前述の通りです。セブン-イレブンに限らず、コンビニは昔から「おにぎり」「肉まん」「おでん」といったアイテムを世の中に提案し続けており、取り扱う商品はますます多様化しています。
これからも私たち消費者をますます便利に、楽しくするような新商品を出し続けること。それがコンビニ業界の生き残りのための必要条件と言って良いのかもしれません。
さあ、次はどんなヒット商品が出るでしょうか?
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