タクシーに乗ってみたら、高齢の運転手さんがマルチリンガルだった:サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(3/4 ページ)
普段は外国人相手の観光案内が多いという運転手さん。前職では東南アジアを中心に日本企業の進出支援を手掛けていたそうですが、帰国後の転職市場ではその経験を持てあましてしまったと言います。
マルチリンガルになったのは、仕事柄必然だったが……
話はさらに続きます。海外で工場の立ち上げをやっていたという経験は、「同じ仕事を続けてやるということにおいては強みを発揮するけれど、それが歳を重ねると辛くなってきた」と、その運転手さんはいいます。「ずっと成果を出し続けないといけない。どんな仕事でも同じだけれども、失敗、即契約解除という状態は、やはりストレスが溜まります」と。
結果、日本に帰国することを決めましたが、帰ってきても「同様の経験を国内で生かす」という場所が見つけられなかったそうです。経験を生かした仕事だと、結局また海外に行くことになる。国内でとなると、もっと若く、給料も安い人が採用される。経験があるのにその経験を持て余してしまうことになり、当時は困ったことになったなと思ったそう。
たまたま「他の仕事が見つかるまでのつなぎ」としてタクシーに乗ることに決めたところ、タクシー会社のサービスとして海外からの観光客を相手にするものがあることに気が付き、その仕事をすることになったといいます。運転手さん同士で、定期的に集まって勉強会を開催し、語学力に磨きをかけ、外国人観光客に人気あるスポットの情報交換をすると教えてくれました。
「『タクシーの運転手』といえば、自由で、言い方は悪いけど気楽な商売だと思うでしょう? でもね、こういう世界でもちゃんと序列というか、順番はあるものだと思い知らされましたよ」と、運転手さんの口はさらに滑らかになっていきます。私は、目的地が近づいてきて、すべての話を聞き終われるのかどうか、そこが心配になってきました(笑)。
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