ソチ五輪ハッキング「誤」報道に見る、偏見に満ちた米メディア:伊吹太歩の時事日想(1/4 ページ)
ロシアでソチ冬季五輪が華々しく幕を開けた。欧米メディアでは、五輪開催前からロシアに対するネガティブキャンペーンが多くみられたが、専門家でなくても「あやしい」と思えてしまうほど……。
著者プロフィール:伊吹太歩
出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。
ロシアでソチ冬季五輪が華々しく幕を開けたが、欧米メディアでは、五輪開催前からロシアに対するネガティブキャンペーンが多くみられた。
例えば、同性愛者が迫害されているという報道(ソチ市長は、ソチに同性愛者はいないと発言した)から、関連施設工事の遅延や五輪関係業者の大規模汚職、ソチにいる野良犬の大量処分まで、ウラジミール・プーチン大統領の独裁イメージを膨らませるような報道が連日続いていた。
そうした報道が盛り上がる中、米NBCニュースが次のような、衝撃的なリポートを報じた。
「ソチ五輪を訪れる人はすべて、直ちにハッキングされる」
こんなタイトルを見た読者や視聴者は、すぐに「ソチに行くのは危険だ」というイメージを抱くはずだ。五輪観戦のためにソチを訪問するのは考え直そうと思う人だっていたかもしれない。
だが今、そのリポートがあまりにも恣意的であると、大々的に批判されている。「中立性」を重んじるはずの米大手メディアがロシアを意図的におとしめようとしていた感が前面に出ているのだ。しかもその割には、NBCはソチ五輪で多額の利益を得ているとして、「利害の衝突だ」といった声まで出ている。
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