ソチ五輪ハッキング「誤」報道に見る、偏見に満ちた米メディア:伊吹太歩の時事日想(2/4 ページ)
ロシアでソチ冬季五輪が華々しく幕を開けた。欧米メディアでは、五輪開催前からロシアに対するネガティブキャンペーンが多くみられたが、専門家でなくても「あやしい」と思えてしまうほど……。
飛行機から降りて、スマホの電源を入れたらハッキングされた?
問題となっているNBCの検証リポートは、「ロシアン・ルーレット」と題して3分ほどにまとめられている。その中で記者は、ソチにおいてスマホやPCでネットワークに接続すると、直ちにハッキングされると報じた。
このリポートを引用して報じる海外メディアの記事を、そのまま翻訳して掲載している日本のニュース系サイトもある。その中には、ソチでは「入国とほぼ同時に」所持する携帯電話がハッキングされたと報じているものも。日本人にも、ソチのそんな危険さが伝わってきているといえる。
元の検証リポートでは、スタジオの司会者が「ソチを訪れる観光客や家族たちが警告を受けることなく、預け入れ荷物の引き渡し所で携帯電話の電源を入れれば、その瞬間から恐らく彼らのデバイスと内部に入っている情報の安全性を守れないだろう。ロシアへの訪問者はハッキングされる可能性がある」と語る。
ロシアで検証をしたNBC記者は、新品のPC2台(WindowsとMac)を米国からモスクワに持ち込み、ホテルの部屋で起動。さらにモスクワのレストランに行き、サムスン製のスマホを起動させて実験を行った。するとPCもスマホもハッキングされてしまったという。
そして記者はこう話す。「悪意あるソフトウエアが、コーヒーを飲み終わる前に私たちの携帯電話を乗っ取り、情報を盗み、ハッカーは電話の盗聴と通話録音をできるようにした」。さらに「24時間以内にハッカーが2台のPC両方に侵入し、自由に私の情報を奪った」とも。
だがこのリポートが報じられるとすぐに、IT専門家たちから非難の声が上がった。NBCの報道は「100%詐欺」と糾弾するものまである。確かに著者のような専門家でない人間でも、ツッコミを入れたくなるポイントはあった。
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