香港で摘発された「ネット企業」が、日本ではセーフな理由:窪田順生の時事日想(2/3 ページ)
米国に本社がある「インターラッシュ」という会社をご存じだろうか。ネットコンテンツ提供企業で、会員はコンテンツ利用料を支払う。よくあるビジネスモデルだが、同社はある手口によって会員から莫大な金を手にした。その手口とは……。
日本にオフィスがない
もうお分かりだろう。ネズ……いや、マルチレベルマーケティング(MLM)の手法を応用しているのだ。つまり、「未公開株」と「マルチ」をかけ合わせたのだ。
といっても、もちろん他のMLM同様、このようなセールストークは企業としてオフィシャルなものではない。あくまで「ディストリビューター」が独断で行った、ということになっている。
だが、大金を注ぎ込んだ者からすれば納得いかない。現在20数名の元会員らが上場をエサにカネをダマしとられたと会社と経営陣らを米連邦地裁に訴えており、その請求額は200万ドル(約1億8500万円)にものぼる。
ここで「おや?」と思う方も多いだろう。訴えるのはいいけれどなんで米国なのと。
実はこの「インターラッシュ」は日本に拠点がない。日本語のWebサイトがあり、「急成長を続ける日本、台湾、香港の各市場のITアプリケーション分野において、アフィリエイト組織を通した事業に力を入れています」(公式Webサイト)というわりに日本にはオフィスすらない。
もちろん、企業にはいろいろな事情があるので深く詮索はしないが、もし意図的に国内で法人登記していないとしたら、なかなかよく考えている。
日本の捜査機関というものは、国内に拠点をもたない者たちには“無力”だからだ。
分かりやすいのが、フィリピンで第二の人生を送ろうという定年退職をした方たちをカモに、介護スタッフ付きの別荘が手に入りますよとダマして数千万を巻き上げた「ロングステイ詐欺」である。
老後資金がパーになるなど悲惨な話もあり新聞やテレビはこの詐欺事件を大きく報じたが、実はこの詐欺で多くのシニアをダマしたとして刑事告訴されたX氏は罪に問われることもなく、被害者に謝罪もせずに東京郊外で穏やかな毎日を過ごしている。昨年末に「公訴時効」を迎えたからだ。
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