ぜんぶ雪のせい……ではなかった? 東横線追突事故:杉山淳一の時事日想(3/6 ページ)
2014年2月15日。東急東横線元住吉駅で電車の追突事故が起きた。大雪の惨事、死者がなくて不幸中の幸いだ。報道によると、非常ブレーキが作動したにもかかわらず、電車が停まらなかったという。でも、それって……。
報道から事故の状況を考察する
この事故の模様を報道や乗客たちのTwitter情報から推察してみよう。まず、当日の状況は、前日の朝から降雪であり、夕方から夜にかけて大雪となっている。東京都心や横浜市では最大で25センチメートルの積雪を観測していたという。こうしたなか、東京近郊の鉄道路線もダイヤが乱れており、東横線も例外ではなかった。深夜0時すぎにもかかわらず、電車は続行運転していた。時事通信によると、「東横線ではこの事故のほかにも、降り始めの14日から15日にかけ、10件のオーバーランが発生。うち2件は事故があった元住吉駅の2番線で起きた(参照リンク)」という。
東急電鉄の発表では「0時30分頃、元住吉駅でホームを過走し停車していた各駅停車に、後続の各駅停車が衝突(参照リンク)」とある。先行列車もブレーキが効かず元住吉駅で所定の位置に停まれなかった。報道をまとめると、先行列車から司令所に「オーバーランした」と報告があり、後続列車に停止を指示。後続列車は時速約80キロメートルで走行していた。しかし、後続列車の運転士は「速度が落ちない」と報告し、非常ブレーキを作動させた。しかし減速せず、およそ600メートルを走行して時速40キロメートルで衝突した。
非常ブレーキは最大限のブレーキ力だ。鉄道のブレーキもクルマや自転車と同じように、回転部分にブレーキパッドを当てて停める。運転士はパッドの押し当てる圧力を加減して、電車をスムーズに停車させる。非常ブレーキはふだんは使わない。乗り心地が悪くなるからだ。非常ブレーキはとにかく絶対に停めるためのブレーキで、クルマで言えばペダルを一気に踏み込んだ状態といえる。
この非常ブレーキは、運転士が何らかの理由で操作しなかった場合、自動的に作動する。その仕組みが「自動列車制御装置(ATC:Auto Train Control)」だ。それ以前の「自動列車停止装置(ATS:Auto Train Stop)」は、運転士が停止信号を無視した場合に自動的に非常ブレーキがかかる仕組み。ATCはその上位版で、制限速度を超過した場合もブレーキを作動させて速度を下げる。
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