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ぜんぶ雪のせい……ではなかった? 東横線追突事故杉山淳一の時事日想(2/6 ページ)

2014年2月15日。東急東横線元住吉駅で電車の追突事故が起きた。大雪の惨事、死者がなくて不幸中の幸いだ。報道によると、非常ブレーキが作動したにもかかわらず、電車が停まらなかったという。でも、それって……。

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鉄道の安全の根底に関わる事故だ

 報道をまとめると、非常ブレーキが作動したにもかかわらず、電車が停まらなかったという。ブレーキ操作をしても停まらず、非常列車制御装置(ATC)が作動しても停まらない。前方には先行電車があって、どんどん近づいてくるように見える。しかもこのとき、前方の電車も事前に駅をオーバーランしており、停止位置を直すために逆進していた。

 ふだんなら後続の運転士は先行列車のテールランプを見るはずだ。しかし、このときは先行列車の進行方向が逆転していたから、前方の電車は後ろ向き。ヘッドライトを灯していた。深夜だけにその白い光は際立つ。正面衝突ではないかと思ったはずだ。追突どころか、向こうも近づいてくる。このときの運転士の恐怖を想像すると、こちらも恐ろしくなってくる。

 今回の事故は鉄道事故としては被害者も少なく、小さな事故として見られそうだ。しかし、「ブレーキが効かなかった」という部分が気になる。鉄道には長年の事故対策の経験から、万全の安全対策が施されている。特に衝突事故には厳しく、自動列車停止装置(ATS)、その高性能版の自動列車制御装置(ATC)が開発され、東横線にも採用されている。しかし、これらの高度なシステムも「ブレーキで列車が停まる」という前提で作られている。肝心のブレーキが効かなければ、その手前でどんな対策をしても意味がない。その意味で、今回の追突事故は鉄道の安全対策の根底を揺るがす重大な事故だ。原因が究明され対策されないと、将来にもっと大きな事故を起こすかもしれない。

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